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炉辺歓語

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炉辺歓語

    炉辺歓語

    

    河井寛次郎 著

    東峰書房
    1978年
    定価 本体2,619円+税

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本書のあらまし
 柳宗悦(民芸研究家 1889-1961)や濱田庄司(陶芸家 1894-1978)らとともに民芸運動を興し、その指導者のひとりとしても活躍した陶芸家・河井寛次郎の晩年の対談・座談をまとめて一書に成したものだ。達意の文章家として知られた寛次郎は、また対談の名手でもあったといわれ、その才能は本書を繰っていくにしたがい、随所に遺憾なく発揮されているのがよくわかる。生命感あふれ、個性の強い独特な名作を数々遺した陶芸家らしく、とにかく情熱的にまっすぐな思いが語られ、生々しいリアリティーさえ感じられる。そして同時に、日本の現代陶芸の黎明期を振り返って知ることのできる、歴史的な証言録ともなっていて秀逸だ。
 なお、著者自身が歓びを語ったという意味から、本書は「炉辺歓語」と題されたという。
本書の魅力
 本書を読んで知ったのだが、後に畏友となった柳宗悦と著者・河井寛次郎との出会いの経緯を語るのは、寛次郎と親交のあった人々の間ではどうもタブーだったらしい。そのあたりの因縁が、対談相手の岡村吉右衛門氏(染織家、民芸研究家  1916-2002)の巧みなリードもあって、本人の口からさらりと語られ、しかし、相当に不愉快だった様子も伝わってくる。少しばかりハラハラしながら読み進んでいくと、そんなふたりの心が、ある「美」をきっかけにして急速に解け合い、固い結束で結ばれていくのが実に興味深い。
 河井寛次郎は陶芸を工芸として認識し、民芸の様式にとらわれることなく、自由な造形を目指し......などと記すと、概念の固定化を嫌った著者は、きっと気分を害することだろう。あくまでも、あるがままに、自由に、自然にものを作り出すことに、創作家として終生腐心した寛次郎の生命の輝きが、あますことなく語られていて好感のもてる良書だ。
お薦め指数
味わい
サービス
読みやすさ
著者プロフィール

KAWAI Kanjiro  1890年に島根県に生まれる。1914年、東京高等工業学校(現・東京工業大学)を卒業。同年、京都市陶磁器試験場に技師として入所。20年、京都・五条坂に窯を築き独立。バーナード・リーチらが来訪。21年、初個展開催(高島屋呉服店)。24年、濱田庄司を介して柳宗悦と出会う。25年に柳、濱田らと「民藝」という新語を作る。29年に帝国美術院より無鑑査として推薦を受ける。37年、日本民芸館の理事に就任。同年、パリ万国博覧会にてグランプリを受賞。47年、「火の願い」刊行。53年に「火の誓い」刊行。57年、ミラノ・トリエンナーレ国際工芸展にてグランプリ受賞。59年に対談集「美のこころ」刊行。1966年、死去。

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