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現代日本の陶芸家

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現代日本の陶芸家

    現代日本の陶芸家

    

    「陶磁郎」 編 著

    洋泉社
    2010年
    定価 本体2,800円+税

    amazon.co.jp
本書のあらまし
 やきものの総合誌「陶磁郎」(1995-2006 双葉社)とアマチュア向けの作陶誌「つくる陶磁郎」(1997-2009 同)誌上で取り上げられた陶芸家のなかから、編者によって将来に渡っても活躍が期待されるだろう120名が抽出され、一冊にまとめられたものだ。各作家が見開きで紹介され、代表作とぐい呑などの作品写真、コンパクトな解説文、プロフィール等によって構成されている。
 四六判、ハードカバーの角背、カバー装という造本は、頑ななまでのスタンダードさであり、だからこその安定感が生じ、本誌面の細心なデザインとも相俟ってとても美しい本に仕上がっている。作家紹介を主なテーマとしたヴィジュアル本では、あまり採用されない体裁であり、風変わりさが面白い。
 なにも陶芸誌に限ったことではないが、これまで長い間、印刷物としての雑誌の多くはいつも読み手の暮らしの周辺にあって支えられ、一方で、だからこそ世に連れ消長を繰り返してきた。それが商業誌であれば、やがて様々な理由によって使命を終えて、いつの間にか歴史の波間に沈んでいく。ましてや昨今のように、メディア自体が社会基盤の変化や技術の発展などによって、大きな変革期を迎えているとなると、なおさら生きにくい。
 創刊前から「陶磁郎」を牽引してきた編集者の入澤美時氏(1947-2009)が急逝し、相前後して、関わってきた雑誌が書店から姿を消していった。そんな様子を見ていると、時代の転換期に差しかかったことにも重なるのだが、本は人なり、という意味を改めて考えさせられたりする。
本書の魅力
 季刊誌として「陶磁郎」の刊行中、併行して同編集部では、掲載記事をムックなどにまとめてシリーズとして発刊したが、本書はその様式を採らずラインアップに入らなかった。
 この本の編集上の特徴のひとつは、作家が生年順に並べられていることだ。それによって同世代の作り手たちの作風の違いなどもクッキリと浮かび上がり、横断的にも見られるようになった。もうひとつが、全掲載作家は、1点ずつぐい呑(盃)作品が価格を含めて必ず図示されることだ。こうして標準化したことにより、各作者の「実力」のようなものが比較できるように思えるし、価格という裏付けによってマーケットでの人気も窺える。
 本書が扱いの範囲とした、1980年代から1940年代生まれの掲載作家全体を眺めると、巨匠・大家に流されず、また名声や人気だけに偏重した構成でもない。それでいて、作品(者)の質はどのページを開いても、ブレずにレベルが保たれていると感じられるのだから、おおよその作家の選定が正しかったということなのだろう。
 本書の冒頭に、私たち日本人には、器を手に持って食事をする生活習慣があって、それが幸いし、「よいやきものとそうでないものを無意識に判断できる能力を誰もが身につけている」(「はじめに」)と、迷いなく書かれている。このような編者の視点を、現代という時代やアイデアなどで包んで丸め、賢しらに見せるのではなく、直截に、あくまでもストレートに押し出そうとする一貫した姿勢に、故・入澤美時氏の面影を見るような気もするが、これは読み違いだろうか。
 だが少なくともこの本が、実際にここにあることについては、今はいないひとりの編集者の意志が受け継がれたから、といって差し支えないと思う。
 さて下世話だが、本書に掲載されている作り手のなかで、ぐい呑(盃)1点の価格(参考価格)が最も高いのは、さて誰か。価格は105,000円だ。
お薦め指数
ヴィジュアル
資料的価値
読みやすさ
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