- 本書のあらまし
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北大路魯山人の星岡窯(神奈川県鎌倉市)から、そう遠くないところにあった家で生まれた著者は、小さな頃、父の使いでたびたび魯山人のもとに通わされたという。大体、子供時分のお使いといえば面倒と相場は決まっているが、この用に限っては楽しいものだったらしい。父とは黒田陶苑の創業者・黒田領治氏だ。
古美術や骨董品を見定めて商うプロらが執筆した専門書や趣味の本は、書店の棚に割と多く並ぶが、近・現代陶を扱う玄人の著すものはほとんどない。しかも、日本を代表するような出版社から商業出版物として次々と上梓する書き手となると、本書の著者以外に今は見あたらない。
この本は講談社の「ART BOX」シリーズのひとつとして出版され、ハンディサイズながら魯山人ゆかりの貴重な資料写真や作品が精選され、ヴィジュアルに構成されている。また編年体をとり、書、篆刻、やきもの、漆、料理と、魯山人のもの作りとしての変遷と多様さ、そして魅力がバランスよく紹介されている。
- 本書の魅力
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土門拳が撮った魯山人のポートレイト、生誕の地・京都の上賀茂神社周辺の現風景、まだ陶芸に取り組む前の濡額や篆刻看板などが、ページを繰るとともに臨場感たっぷりに現れてくる。こんなふうにしてこの本ははじまり、螺旋階段を昇るように魯山人の美の高みへと誘っていく。
そしてその接ぎ穂には、とくに近・現代の陶芸品をプロとして扱ってきた著者ならではの魯山人作品の見方、評価、エピソード、あるいは鑑賞のための基本的な知識などが随所に文章として織り込まれていて、読者の興味をなかなか逸らせない。作者・魯山人の制作意図や、技法、素材の話題、または完成作の意味、位置づけなどが語られていく。
伊賀のシノギの平鉢の表面は、大きめの蛤で左から右へと土をえぐり取って作ったとか、汁次のなかでは、牡丹竹林の金箔手が一番の念作だと教え、極めつけとして、笹と蟹を描いた志埜(志野)の平鉢の絵は大変珍しい図柄だが、魯山人が住んでいた鎌倉にはよく見られた光景だとは、なまなかな経験と見識では決して書けないだろう。
それらの話を、美しい写真と照らし合わせつつ読み進んでいけば、門外漢はもちろん、少し覚えのある鑑賞者といえど「なるほど、そうだったんだ」と、合点がいくに違いない。
展覧会などの折、自店で収集家らに接する著者はささやくように、かつ情熱的に語りかけ、そしていつも教え上手だ。さながらに、丁寧で抜かりなく書かれた本書の作品解説にもやはり充分な説得力があり、この本の特徴になっている。
美の巨星・北大路魯山人に歩み寄るための、小さな宝石箱のような案内書に仕上げられている。
- お薦め指数
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読みやすさ 


資料的価値 


ヴィジュアル 


- 著者プロフィール
KURODA Kusaomi 1943年に神奈川県鎌倉市に生まれる。明治学院大学経済学部卒業。現在、渋谷・黒田陶苑代表取締役。自店やデパートなどで、近代~現代の陶芸家や工芸家の展覧会・個展など企画。沖縄県立芸術大学陶芸コース非常勤講師も務める。主な著書として「極める技 現代日本の陶芸家125人」(小学館)、「とことん備前」(工芸出版)、「器 魯山人おじさんに学んだこと」(晶文社)、「備前焼の魅力探究」(ふたばらいふ新書)、「名匠と名品の陶芸史」(講談社)、「終の器選び」(光文社新書)、「やきものは男の本懐である」(バジリコ)など多数。


