右●坂場圭十「色絵芥子文5寸皿」W15.5㎝ 参考価格=3,675円
「ただいまぁ」
父の声が玄関でしたころ、私は"とん焼"ととうもろこしとサラダ菜を皿に盛りつけていた。この時間が好きだ。うちで一番出番の多い、草色の大皿。それまで義務だった晩ごはん作りを楽しみに変えてくれたは、この四角い皿だった。どうってことのない私の料理でも美味しそうに見える。水切りかごに入ったままの取り皿も並べよう。私のは花の絵がついている。山吹色がきれいな、盛り上がってガラスみたいな絵を見ていると不思議となつかしく、やさしい気持ちになれる。なぜだろう......。
「おっ。うまそうだね」
最近お気に入りのビール缶を冷蔵庫から出しながら、「やっぱり木曽さん、どこか違うな」と父がいう。くすっと私は小さく吹き出した。まるで知り合いみたいないい方だったから。父は、この大皿の作者と会ったこともないらしい。でもたしかに、この皿がうちにやってきたのは父のおかげだった。だから私がこれをテーブルに並べると、どこか照れくさそうな、満足そうな顔になる。(続く)



中央●木曽志真雄「オリベ8寸角皿」H4.0 W25.5㎝ 2008年 「とん焼」は小津家風・豚の角煮のこと。作りおきの煮豚を切って焼いて甘辛のタレをからめるだけ。小津家はみんなコレが好き。撮影協力:宙(そら)東京都目黒区碑文谷5-5-6 TEL.03-3791-4334




