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Exhibition previews & reviews

鷹尾葉子 のプレビュー&レビュー一覧
  • 2009年10月23日~2009年11月 5日
  • 鷹尾葉子 展
  • Exhibition of TAKAO Yoko/ぎゃらりー玄海 (東京都新宿区新宿 TEL.03-3352-3105)

 詩的で、モダンな抽象絵画のような装飾をまといながら、和風にも傾かず、でも西洋的な偏重にもない形のこれらの器は、そのまますぐに食卓のうえに並べられ、料理を盛って実用に使えるという点で、現代の日本人の暮らしをそのまま表すような作だといえる。それは作り手・鷹尾葉子(たかお ようこ)氏自身の暮らし振りが、ことさら意識することもなく自然に映され、作られているからだろう。
 作者は1980年代後半頃から、注文が次々と増えていって、それらの需要に応えるようにプロの陶芸家として活動をはじめた、人気作家のひとりだ。
 本展では、皿、鉢、ボウル、カップなどを主体にし、加えて壁掛けや植木鉢、それにオブジェなども出品されている。展示作全体のトーンは、とても静かな落ち着いた統一感があり、器の形は明快でシンプルなものが多く、そのことによってなににでも使えそうな幅が生まれるのだろうと思わせる。とはいえ、作り手の側に自信がなければ、○○用、○○向けと提案したくなりそうだが、一切の作品名すらなく、ただ作品が展示されるばかりだ。
 余分が削ぎ落とされたシンプルな造形に比し、そうは見えないかもしれないが、しかし素材と一体化したような装飾は、実に入念に作られた結果だ。素地土、化粧土、釉薬、顔料などを複雑、かつ自在に組み合わせ、それらを混ぜ、塗り、描き、削り、ひっかき、この人独特のテクスチャーを作り上げていく。だから、ほんの小さなキズのように見える削りも、意図的に入れられており、そういう小さなひとつの景色が、全体の素材感や装飾性へと導かれ、器の雰囲気を作っていくことになる。作者によれば「好き勝手に、楽しみながら描いている」のかも知れないが、作り手の等身大の作に共感するファンが多いのも事実だろう。
 一方で、「八木一夫賞現代陶芸展」など公募展で入選を重ねてきたキャリアを持つ作者は、一時期、やきものでオブジェを作る意味は......? などと考えることもあったらしい。長く器を中心に作り続けながら、今では、オブジェとの間も自由に往き来し、見る者にストレスも感じさせず、その姿は自然だと思える。そんなところにも、この人らしさがうかがえたようだった。
 作家として鑑賞者の視線を逸らさず、関心を保ち続けてきた陶芸家だが、本展を見ていても感じるのは、作品の質に較べて発表価格は良心的で、廉価だということだ。こんなところにも、人気の要因のひとつがあるのかも知れないと思った。

 

上左●抽象絵画のような装飾の皿(発表価格=7,350円~26,250円)には、独特な素材感がある。和洋中となにを盛っても料理が映える器でもある。 上右●丸皿の裏を返して見ると、三つの膨らみが脚となっていて、表面の装飾と関連した造形が面白い。

作者の鷹尾葉子氏は東京・中野区生まれ。多摩美術大学油画科を中退、後、アトリエ飛行船陶芸研究所にて学ぶ。現在、アトリエは東京都府中市。
これらの器(発表価格=5,880円)には、用途を限定する枠がなく、フランクに使える自由さがあるばかりだ。
観葉植物を育てるシャレた鉢(発表価格=26,250円)や、絵画のような壁掛け(発表価格=15,750円)など、食の器以外にも、様々なアイデアがある。
本展会場では7年振り7回目の展覧となり、およそ70点ほどの新作が発表された。東京を中心に、毎年、中部、関西など、各地でも個展を開催している。