
0064号
2010年08月02日更新
おもに茶杓を削ってそれを生業としているという意味で、茶杓師などと呼ばれ、また数寄者ともいわれる海田曲巷(KAIDA Kyokko)氏の新作茶杓展を見た。
茶杓といえば、茶人らが傍らに削って作ることはよく知られているが、自己表現として茶杓をもっぱら削っている作者となるとあまり聞かない。海田氏は30年ほど前から独学で削りはじめ、これまでも数多くの作を発表し、ニューヨークやロンドンなど海外でも高い評価を得ている作り手だ。
作品は茶杓、筒、仕覆の3点セットがひと組になっていて、仕覆については上田晶子氏が素材選びから担当し、仕立まで行うという共同作業だ。
茶杓の素材となる煤竹は、およそ200年ほど前のものが中心に使われ、一般には敬遠される虫喰いや曲がりがあるような、作者の興に訴えかけてくる材を探し出すのが要点になるという。なるほど作品を見てみると、明るい色から小豆色、また黒に近い竹まで様々ある。また材に入っている節や斑、曲がりなどの性質を景色に見立て、そのまま作品の主題とし巧みに活かされている。脇に置かれた筒には銘が書かれていて、どれにもウィットが効いており知的好奇心がくすぐられて面白い。
仕覆に使われている素材は、日本、中国、アジア、ヨーロッパなど世界中のものだ。古くは中国製の500~600年前のもの、新しくても18、19世紀頃のヨーロッパで染め織られた裂が使われ、ここで新たな命を得ているようだった。
これら海田氏の作品には、総じて茫洋とした暖かさが感じられ、ゆっくりと、しかし確実に伝わってくるユーモアが伴っているのが特徴といえるだろう。ひたすらなシャープさだけを求めようとしていないのが、これらの作の人気の秘密かも知れないと思った。落ち着いた美と上質な粋は、洋の東西を問わず受け入れられそうな気がした。
上左●「渡守」(発表価格147,000円) 上右●会場は男女問わず熱心に見入るファンで賑わっていた。