展覧会への招待

Exhibition previews & reviews

浦口雅行 のプレビュー&レビュー一覧
  • 2009年11月25日~2009年12月 1日
  • 青瓷 浦口雅行展 2009
  • Exhibition of URAGUCHI Masayuki / 日本橋三越 (東京都中央区日本橋室町TEL.03-3241-3311)

 青瓷を焼く作家として、ファンの間に浸透してきた浦口雅行(うらぐち まさゆき)氏の新作展を見た。学生時代(東京芸大)の恩師のひとり、三浦小平二(MIURA Koheiji 1933-2006)に作家形成において強く影響を受け、卒業後、創作活動をはじめた当初から青瓷にターゲットを絞って作り続けてきた。
 会場に展示された出品作を概観すると、中国の官窯からの流れを汲む伝統的な「青瓷」と、暗緑色を呈した「海松(みる)瓷黒燿砕」というふたつの青瓷が主体となった展示であるように見えた。そしてその間には、黒晶、米(色)瓷、月白瓷、鶯瓷など独創的な幾種類もの青瓷があって、それがそのまま今日の仕事へと至る道筋となってつながっている。作者は青瓷(粉青)を基本に置いて釉を熟成させ、今のところその最も先端的な成果が海松瓷という位置づけだ。
 さらに今展では、そこに「瑠璃燿砕」という新作を加えての発表となった。この釉が施された新作の茶碗は深い濃紺色を基調としていて、近づいてよく見ると無数の貫入が光を屈折させ、美しい瑠璃色に輝いて見える。また一部には、眺める角度によって様々に彩りを変え、虹のようにも光る幻想的な作だ。この瑠璃燿砕は他の青瓷作品とは異なる、別系統の釉薬に属すものらしい。青磁釉の基本は、釉中に含まれる微量の鉄分による呈色だが、瑠璃燿砕はコバルト(呉須)によって発色させているからだ。しかし海松瓷という独創的な青瓷釉ができたことから発展・展開させ、技術を応用することによって得られた作であることには違いない。
 また造形としては、伝統に忠実な、オーソドックスな形態の花生や輪花鉢などが出品されている一方、この人ならではの著しく個性的な姿をしているのが「博山爐」や「博山壺」だ。着想の原点にあるのは中国の金属器で、前漢代頃からは陶製のものが作られた。山の形に作られた蓋に特徴が認められ、とくに浦口氏による「博山」は情熱的で、饒舌な装飾性が際立っているように感じられる。このやや過剰にも感じるほどの蓋の多重造形が、ボディの形と一体となって全体の均衡が保たれると、一転、青瓷作品としての重厚感が顕在化し、作者の造形センスがよく示されているように思える。
 壺や花入、茶碗などの静けさ、「博山」の重みや動きのある形、また釉による青い色の変化の妙が大方の観覧者の気を引いていて、見応えある展覧となっていた。

 

上左●五重の塔のような「青瓷黒晶双耳博山壺」H43.7㎝。独特な「浦口博山」様式が築かれつつある。 上右●1964年に東京に生まれる。89年に東京芸術大学大学院三浦小平二研究室修了。91年に独立築窯。2002年に茨城県芸術祭美術展覧会特賞受賞。09年、茨城工芸展茨城工芸会80周年記念賞受賞。現在は茨城県石岡市にて制作。右は「青瓷六耳博山大壺」H51.5㎝

「青瓷輪刻彫文大鉢」W42.5㎝。すっきりと明るい青瓷釉の色は美しく、すっと吸い込まれるような感じさえする。
「窯変米瓷茶碗」H8.6㎝(発表価格=262,500円)。釉調に合わせて天目型、歪みのある沓型、平型など茶碗の形も様々見られた。
銀河に浮かぶ星々のように輝く「瑠璃燿砕」は、呉須の成分を変化させた4種類ほどが、いずれも「瑠璃燿砕茶碗」(発表価格=315,000円)として出品された。
本展会場では6回目の展覧となった。来年(2010年)は春から笠間市、岡山市、米子市など全国各地での個展発表が忙しく続く予定。