
0064号
2010年08月02日更新
本展のサブタイトルには、「川小牧から生まれたもの」とある。川小牧とはもちろん、作者・加藤委(つぶさ)氏の工房がある岐阜県加茂郡富加町の地名のことだ。当地で20年ほど仕事を続けてきたが、今年、多治見市小名田町にある実家に制作拠点を移す前の、締めくくりの発表となるのにちなんでこの副題が添えられていた。
出品作は、20年間のうちに40回ほど焼成を繰り返してきたという、愛用の薪窯焼成によるものが中心だった。陶土と磁器土を用いて作られた各々の作が、小品を含めておよそ150点ほど出品され、どちらもともに焼締めと施釉ものとが展示されていた。
ガス窯で焼かれた、縁が包丁で切り取られた鋭利で美しい青白磁のイメージが残像としてあるが、今回は、薪窯でそれと同種の磁器土を焼締め、また青白磁釉を酸化焰で焼いて見せており、どちらも魅力があった。磁器土をロクロ成形で立ち上げながら、動的な造形を引き出すことに成功しており、花入などの口作りや、皿や鉢などの縁はあくまでもシャープに作られ好感がもてる。また、薄緑青色の釉の発色具合や、盤などに降った灰なども装飾として過不足ないように感じられた。
一方の土ものの作も、動きのあるロクロ造形が冴え、崩れそうでいながら崩れない際どい均衡が保たれ、見ていると独特な緊張が伝わってくる。鉄絵による装飾は思うがまま、奔放にして嫌味がないのは、この作り手の天性のセンスによるものとしかいいようもない。いずれにせよ、自身の持つ固有の感覚を素材に沿わせながら形を探るのが、この作者ならではの制作手法であり、その意味で見事な一体化を示している痛快な新作展だった。
上左●縁作りにシャープさのある「川小牧白磁ドラ鉢」(発表価格は73,500円)。 上右●同会場では4回目の個展発表となる作者・加藤委氏。