展覧会への招待

Exhibition previews & reviews

加藤委 のプレビュー&レビュー一覧

 本展のサブタイトルには、「川小牧から生まれたもの」とある。川小牧とはもちろん、作者・加藤委(つぶさ)氏の工房がある岐阜県加茂郡富加町の地名のことだ。当地で20年ほど仕事を続けてきたが、今年、多治見市小名田町にある実家に制作拠点を移す前の、締めくくりの発表となるのにちなんでこの副題が添えられていた。
 出品作は、20年間のうちに40回ほど焼成を繰り返してきたという、愛用の薪窯焼成によるものが中心だった。陶土と磁器土を用いて作られた各々の作が、小品を含めておよそ150点ほど出品され、どちらもともに焼締めと施釉ものとが展示されていた。
 ガス窯で焼かれた、縁が包丁で切り取られた鋭利で美しい青白磁のイメージが残像としてあるが、今回は、薪窯でそれと同種の磁器土を焼締め、また青白磁釉を酸化焰で焼いて見せており、どちらも魅力があった。磁器土をロクロ成形で立ち上げながら、動的な造形を引き出すことに成功しており、花入などの口作りや、皿や鉢などの縁はあくまでもシャープに作られ好感がもてる。また、薄緑青色の釉の発色具合や、盤などに降った灰なども装飾として過不足ないように感じられた。
 一方の土ものの作も、動きのあるロクロ造形が冴え、崩れそうでいながら崩れない際どい均衡が保たれ、見ていると独特な緊張が伝わってくる。鉄絵による装飾は思うがまま、奔放にして嫌味がないのは、この作り手の天性のセンスによるものとしかいいようもない。いずれにせよ、自身の持つ固有の感覚を素材に沿わせながら形を探るのが、この作者ならではの制作手法であり、その意味で見事な一体化を示している痛快な新作展だった。

上左●縁作りにシャープさのある「川小牧白磁ドラ鉢」(発表価格は73,500円)。 上右●同会場では4回目の個展発表となる作者・加藤委氏。

見る者の気持ちをそそるように人懐っこい「鉄絵皿」(各8,400円)たち。
危うく絶妙な造形バランスと、小気味いい鉄絵が魅力の「鉄絵茶碗」(発表価格は52,500円)。
薪窯で焼くからこその雰囲気が出た「川小牧白磁焼〆花器」。
作者によって、20年間の川小牧での制作とその思いを振り返って書かれたものという。