
人間国宝に認定されて5年を経た、
伊藤赤水氏の新作展が開かれ盛況だった。会場には、果敢に新しい仕事に挑んだ近年の成果が一堂に展示されていた。
江戸時代後期から続く、代々の窯のある新潟県・佐渡の土のみを素材とし、当代は無名異窯変や練上花紋などの独創的な仕事で、高い評価を受けている。本展ではそれらの作域をさらに広げて精度を上げる一方で、練上魚紋や同鳥紋など、これまでに見られなかった新手の文様を取り入れた作も展示された。作者は「新しいこれらの紋様は、まだほんの入口だ」というが、とくに簡素にデザイン化された魚紋は洗練されており、多くの関心を集めていた。
また練上から離れて、「佐渡ケ島」という名が付された土器のような雰囲気を持つ作が出品されており、驚かされた。金平糖ほどの石粒につなぎとなる土を混ぜて、手捻りと板作りによって成形したものという。ただでさえ扱いにくいといわれる佐渡の土だから、成形作業は困難を極めたようだ。佐渡の大地そのものをイメージし、それをやきもので表現することを意識した作とも思えた。
人間国宝としての社会的な重責を担いつつ、個人作家としては老成しながらも無名異の可能性を探り、こうした新たな作に挑み続けようとする作者の姿勢に好感が持てた。大作から実用的な小品まで、およそ70点ほどの出品だった。
上左●代表作のひとつといえる「無名異練上花紋角皿」。発表価格は3,150,000円 上右●1月17日(土)14時からはギャラリートークも予定されている。