展覧会への招待

Exhibition previews & reviews

伊藤公象 のプレビュー&レビュー一覧
  • 2009年8月 1日~2009年10月 4日
  • 伊藤公象 WORKS 1974-2009
  • Kosho ITO WORKS 1974-2009 / 東京都現代美術館 (東京都江東区三好 TEL03-5245-4111)

 石川県金沢の彫金家の長男に生まれ、結果として土を素材に選び、しかし壺や茶陶などを作るいわゆる伝統的な創作とは一線を画しつつ、35年あまりの歳月を歩んできた特異なベテラン作家が伊藤公象氏(いとう こうしょう 1932-)だ。
 だから早くから国際的な芸術・美術展などに出品し評価を得る一方で、国内の工芸界とはやや距離を置きつつ仕事をする、独創的な作者ともいえる。そして、そういった志向は、そのまま作品作りにもよく現れているといっていいだろう。
 いわゆる器とはスケール感がまったく異なり、作品が大型であることなどから、これまで一会場にまとめられて鑑賞する機会に恵まれてこなかった。アトリエのある茨城県笠間市(茨城県陶芸美術館)での公開に続き、代表作ばかり20点ほどが、いよいよ東京で展示されはじめ、注目を集めている。
 表現素材を土に限定し、土だからこそ生じる襞(ひだ)や亀裂、自然なカーブや断面などの表情をとらえて作品に取り込んでいく。作るというよりも、むしろ土の性質をそのまま引き出すことに細心の意識が払われ、作者の視点は土を観察したり、あるいは、それらを象徴的に見せるための工夫に集中しているとも感じられる仕事だ。無作為な、いわば土の自然な姿や痕跡を焼いて、陶に変じて見せていく。
 これらの作品の特徴は、いくつものパーツが集まり、作品によっては2000個もの小片によって作品全体が構成され、インスタレーション展示されることだ。もちろん絵画や器物とは違うこれらの作品からは、同種のものが多数集積したときにのみ生じる「集合美」があり、また、宇宙を漂う塵やガスが集まり、温度を上げ、やがて星に生成されていくのに似た不思議な、内包されたエネルギーの胎動が感じられる。整然とした秩序と混沌、作為と無作為が出会って生まれた生命力を、これらの作にはっきりと感じることができる。
 美術の概念を問い直すために、たまたま土を使って表現し続けてきたのか、あるいは、土でなければならなかったかについては、作者に直接問わなければ不明だが、これらの作は実に印象深い陶芸作品として眺められるのだ。
上左●伊藤公象氏。東京都現代美術館(MOT)の広大な展示空間に合わせて再構成される大型インスタレーションは、もちろん本会場でしか見られないダイナミックな展示となり必見だ。 

上右●「木の肉・土の刃」1991年 高松市美術館蔵 撮影:内田芳孝


*同展の関連行事として以下が予定されています。
■アーティスト・トーク
 9月20日(日) 13時~14時 伊藤公象氏による作品解説

 

◆チケット・プレゼント
本展の招待券を、ペアで5組(10名)の読者の皆さまに抽選のうえプレゼントします。
ご希望の方はお問い合わせフォームからお名前と、内容欄に「伊藤公象展 チケット希望」と記入し送信して下さい。なお、発表は発送にかえさせていただきます。<<多数のご応募をありがとうございました。「チケット・プレゼント」は締め切らせていただきました>>

「木の肉・土の刃II」1993年 愛知県美術館蔵 撮影:内田芳孝
「土の襞 踊る焼凍土」2008年 作家蔵 撮影:内田芳孝
「客土シリーズ 長石による襞 No.2」2000年 作家蔵 撮影:山本糾
展示室入口。正面には特徴的な展示を暗示させるような「44の染体」1976年
  • 2009年4月18日~2009年6月21日
  • 伊藤公象 1974-2009
  • 茨城県陶芸美術館 (茨城県笠間市笠間 TEL.0296-70-0011)

 伊藤公象氏(1932-)は石川県・九谷の窯元に弟子入りの後、茨城県・笠間に工房を構えた当初は、器のデザイナーとしての仕事を模索していたという。その後はいったん陶芸から離れたが、70年代のはじめからは素材を陶に限定し、土の性質を巧みに作品に取り入れたシリーズを次々と発表、器作りにとどまらない陶の造形や、陶のインスタレーションなどの分野に新たな地平を拓いた作家として知られている。
 生の陶土に力を加えると、どんな形にも変形させることができる可塑性という性質に着眼した「多軟面体」、生土が乾燥の過程で収縮することに注目した「褶曲」、また凍った生の土をそのまま焼成し、氷の結晶を土に移して見せる「起土」などが代表的なシリーズだ。また作品は、建築装飾やパブリックアートとして制作される点においても、実用としての器や室内鑑賞品としての領域に安住せずに制作を続け、それを長く意識し実践してきた作家ともいえる。
 本展は35年間におよぶ作者・伊藤公象氏の創作の全貌を俯瞰することのできる回顧展であり、加えてこのために新作も制作され、インスタレーションされるという。陶芸家としての作者の再評価、あるいは新たな議論が起こる展覧になることなどが期待される注目展といえるだろう。
上左●「土の襞 青い陶結晶」2007年 上右●「アルミナのエロス(白い固形は......)」1984年 東京都現代美術館蔵 撮影:内田芳孝

 

 なお同展の関連行事として以下が予定されている。

■美術講演会(対談):2009年5月10日 伊藤公象×竹内順一(茨城県陶芸美術館館長) 茨城県陶芸美術館
■伊藤公象 ワークショップ(予定):2009年4月26日、5月30日  茨城県陶芸美術館
■本展巡回予定:2009年8月1日~10月4日 東京都現代美術館 TEL.03-5777-8600(ハローダイヤル)