工芸パースペクティブ

第1回

公募展の役割と功罪(1)

金子賢治氏(東京国立近代美術館工芸課長)に聞く

 現在、様々な団体・組織・会派などによって、規模の大小、テーマなどに違いはあれ、実に数多くの陶芸を対象にした公募展が開かれている。しかしそこには入選・落選という線引きがあることから、明確な審査基準や落選の理由などを知る機会はほとんどなかったが、昨今、様子が少しずつ変わってきたようにも見える。そこでこれまで多くの公募展の審査に関わり、研究会などを通じて産地の若手作家らと交流し、「現代陶芸」の啓蒙活動に奔走してきた金子賢治氏(東京国立近代美術館工芸課長)に、公募展の実状と課題、また出品者へのアドバイスなど聞いた。


日本の陶芸公募展の概観と、その現状を教えて下さい。

 外国に較べて、日本の陶芸の公募展は圧倒的な数と規模だ。各々の公募展は、主に工芸団体、自治体、専門の職能団体(協同組合など)、ジャーナリズムなどが開催・運営している。
 団体でいえば、陶芸専門ではないが「日本伝統工芸展」(主催〈以下略〉・日本工芸会)と「日展」(日展)が他を圧する大きな規模で、それに「日本クラフト展」(日本クラフトデザイン協会)を含めて三大公募展といっていいだろう。自治体が主催する陶芸公募展に「益子陶芸展」(栃木県・益子町)、「長三賞現代陶芸展」(愛知県常滑市)、「出石磁器トリエンナーレ」(兵庫県・豊岡市)などがある。アマチュア、プロもひっくるめて市民が誰でも参加出来るのが各県の県展などで、漆・金属・ガラス部門などはあったりなかったりするが、陶芸部門はどこの県展にもかならずあって、また、出品数の大半を占めているのが現状だ。 それから「川崎市展」「浜松市展」とか、「新潟市展」「萩市展」など市の規模でも公募展が開催されていて枚挙に暇がない。それらにもほとんど陶芸部門がある。さらに国も「国民文化祭」を主催していて、陶芸・工芸部門の展覧会、公募展がある。
 それから各陶産地の組合や陶芸家団体が主催するのがある。たとえば「愛媛の陶芸展」(愛媛陶芸協会、愛媛新聞)。「国際陶磁器展美濃」は美濃地方の職能団体と自治体(岐阜県、多治見市ほか)が一緒になって催す世界最大級の陶芸公募展だ。またジャーナリズムが主催するのは数も多い。「日本陶芸展」(毎日新聞社)、「朝日陶芸展」(朝日新聞社)、「鹿児島陶芸展」(南日本新聞社)、「西日本陶芸展」(西日本新聞)など。さらに「田部美術館大賞茶の湯の造形展」(田部美術館)、「菊池ビエンナーレ展」(菊池寛実記念智美術館)など美術館が主催する陶芸公募展もあり、実に多彩で活況を呈している。しかもそれら公募展が、大きな権威を持っている国は他に例がない。
 確かにヨーロッパでもファエンツァ(イタリア)やヴァロリス(フランス)などで世界規模で公募展をやっているし、最近ではスイスではじまった磁器の陶芸公募展がある。しかしいずれにせよ、海外の陶芸公募展は数えるほどしかないが、そういうイベントが陶芸界を活性化させており、それを自国開催しようと計画したのが、韓国と台湾だ。韓国も大きな規模で取り組んでいるし、台湾も新たに美術館ができて大々的にやろうとしている。日本で散在している公募展をひとつに集結したようなものだ。いわば美濃国際+日陶展+朝日陶芸を結合したようなものだから、大事業になるし、公募展の数が少ないからお金も人もたくさんつぎ込める。

金子賢治 KANEKO Kenji
1949年に三重県に生まれる。78年、東北大学大学院文学研究科美学美術史修了。サントリー美術館で学芸員として勤務の後、84年から東京国立近代美術館に勤務。99年に文化庁文化部地域文化振興課美術品登録調査官を経て、2000年より東京国立近代美術館工芸課長。研究テーマは「現代工芸」、なかでも陶芸評論を幅広く展開している。主著に「現代陶芸の造形思考」(阿部出版)、「昭和の美術 全6巻」共著(毎日新聞社)、「バーナード・リーチ再考」監訳、解説(思文閣出版)など。

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