展覧会への招待

Exhibition previews & reviews

  かつて主に李朝時代の朝鮮で焼かれ、日本に伝えられて茶人たちを虜にしてきた茶碗が高麗茶碗だ。佐賀県・唐津を本拠地として活躍してきた田中佐次郎氏は、5年ほど前、韓国・蔚山(ウルサン)市に本格的な登窯を築いた。本展では、ここ1年ほどの間、その工房での11回の窯から焼き出された23碗の選りすぐられたいわば現代の高麗茶碗と、30点余のぐい呑の秀作が発表された。粉引、刷毛目、伊羅保などの出品作に混じり、なかに「黒刷毛目」という聞き慣れない呼称があったので聞くと、刷毛目が高温で焼成されてできた一種の窯変茶碗らしい。なかでもことさら美しく感じたのは、粉引が還元焼成され、薄青く発色した「靑霄」と名付けられた茶碗だ。「霄」の字のごとく、はるかな空の果てを想像させるに充分な佳品だ。作者は「茶碗は口作りに腐心を重ねて作っている」というが、微妙にバランスのとれた器全体の造形美や、巧者風な高台の雰囲気など、口作りばかりでなく、どこもかしこもこの人独自の深い美意識が浸透して形を成した茶碗ばかりだった。今展の発表価格は、茶碗は60万円弱から100万円までの間で、ファンの心をしっかりと揺すぶった結果、ほとんどが売約済みになっているのもさすがだと思った。
左●手にとってじっくりと鑑賞する愛陶家も多く見られた。右●いつも和服姿で個展会場に現れる作者。
「粉吹茶碗」H9.3 W16.1㎝
「黒高麗茶碗」H8.7 W14.4㎝
「靑霄茶碗」H10.2 W16.7㎝
「波舵茶碗」H7.9 W18.0㎝