
会場に一歩入るなり、漆芸の展覧会に迷い込んだかのような錯覚に襲われた......。これらの作は、もちろん漆でなくやきものであり、しかも色絵磁器というからビックリだ。だから前田正博氏の展覧会名には、わざわざ「色絵磁器展」と付されることが多い。
色絵といってもこの作者の場合、ごく限られた数色の色絵具を巧みに使って、本展に見られるようなパターン模様や洗練された花鳥を描いて、特徴的な装飾としている。今展ではとくに、茶碗、香炉、鉢、花入などが黒と赤をテーマに選んで制作されていた。模様のベースは「市松」という。面を強調した造形が、市松の色絵模様とほどよく響き合って感じられる。それにしても、これらの作品が持っている都会的な洗練は一体なんだろう? 前田正博氏の作を見ていて、いつも思う大いなるフシギだ。
左●色絵磁器の大鉢。右●2009年1月には東京・新宿の柿伝ギャラリーにて個展予定。