展覧会への招待

Exhibition previews & reviews

  • 2012年4月 7日~2012年4月16日
  • 服部峻昇展 漆芸の燦
  • Exhibition of HATTORI Shunshou / 和光ホール (東京都中央区銀座4-5-11 TEL.03-3562-2111)

 長く京都の漆芸界を牽引し、本年、創作活動をはじめて50年を迎えたという服部峻昇氏の節目となる、同会場では4年ぶり5回目の個展が開かれている。
 会場をひと巡して感じるのは、出品作の多くには宝石のような閑雅な輝きや、また、万華鏡を覗き見た時にも似た心躍る不思議な華やかさがあることだ。目を奪われるほどの虹色の光彩を伴った緑や青、印象深い金、真珠のように映る白色など、どれもとても美しい。そして引き締まった漆の艶やかな黒が、それらの脇を固めて存在感を際立たせている。
 こうした特異な色や輝きを見てすぐに思うのは、これらは一体、なにによって作られているのだろうという疑問だった......。
 服部氏の作の特徴のひとつは、漆の伝統技法を基本に置きながらも、なお装飾効果を高めるために異種の素材を複合的に用い、多様な技法を操りつつそれらをまとめ、ひとつの作品に仕上げていることだ。日本で採取された漆に、タイのタマムシの上翅、ニュージーランドやメキシコの耀(よう)貝と呼ばれるアワビ貝の一種なども用い、たとえば、漆を塗り重ねて盛り上げる「高蒔絵」、貝殻などの素材を漆地に埋め込む「螺鈿」、金属の板を貼る「平脱(へいだつ)」という超絶技巧を駆使し作られている。
 また、素材は作者の美意識にかなったものであるのはもちろん、これらの作に見られる幾何学文様や唐草・草花文様、あるいは写実的な図柄を描くものとして効果的に選択されて使われている。このように、いわば素材に執着するのは、言い換えれば素材から創造的な刺激を受けているともいえ、それは優れた工芸家の多くに固有の性向であり、服部氏の仕事の基本にもなっていると思われた。
 それともうひとつ、作品を見ていて思うのは、どの作にも共通して装飾と一体化した個性的な造形に仕上げられていることだ。展示された飾箱はもちろん、香合や茶器などの茶道具でさえ、和とか洋という場や様式に限定されず、また、古今などの時間軸からも解放された素材に起因した形が現れているような気がした。
 美しく、細微な断片を執拗に、執念をもって集積し、造形としてひとまとめに成立したものだけに備わる緊密な強さ、あるいは心地のよい緊張が、本展の出品作からは確かに感じられる。そして多分、これらの作品の持つ名状しがたい強靱さや素材の生気から生まれた美が、他の領域の表現には見られない工芸の独自性なのだと痛感させられる展覧でもあった。
 飾箱、茶器、香合などの茶道具、額装品など、節目の展覧会に相応しい秀作ばかり、70余点が展示されている。

 

上左●「玉虫飾箱-宝寿」H9.5  W15.0×12.0㎝  上右●「耀貝飾箱-早春」H9.5  W15.0×12.0㎝

「玉虫飾箱-吉祥」H9.2 W9.2×9.2㎝