
0072号
2012年01月26日更新
これまで、地元・岡山や広島など中国地方を中心に活動してきた作者・星野聖(ほしの せい)氏の、本会場での2回目の個展が開かれている。
入口近くに展示されている壺は、肩に降った胡麻がよく溶け、長く伸びて美しく流れた様子を見ると、念の入った本格的な焼成を行っているように思われた。工房のある瀬戸内市牛窓町に近い寒風、それに伊部の下松、大ケ池産などをブレンドして作った土を使って作られた備前の焼締め陶、備前焼だ。
幅は約1.8メートル、長さがおよそ16メートルほどの半地下式の登窯を用いて、20日間ほど焼成して得られたものという。特にさほど大型の窯でもないことからすると、かなりじっくりと時間をかけて焼き上げているといっていいだろう。また、ひと窯の焼成のために必要な赤松の薪は、4トン車に5台分ほどらしいから、実感としてはかなりの量になる。
筆による絵付もせず、施釉も行わない焼締め陶ならではの装飾といえば、もちろん焼成による土肌の変化に尽きる。緋襷などを除けば、出品作の多くでは自然釉が融けて流れていて、それがこれらの作品の特徴的な見所となっている。一部の作には、深くて暗い紫色に近いような発色をしているものや、まるで緑青が吹いたかのような作も見られ、興を逸らせない魅力がある。また、ひとつの作品のなかに、明るく白っぽい素地の土色、朱、黄土色から焦げた黒っぽい茶まで、様々な色の変化が段階的に続いて見られる。これらは窯詰めと焼成による工夫など、装飾的な効果を狙って作者が意図的に導いたものと推測でき、焼締め陶でありながら、どこか華やかさのある作にも見えて独特だ。
作品の要諦を決めるもう一方の造形は、ほとんどの出品作が紐作りで成形され、型ものは角皿などほんの一部だけという。展示された作全体を見回すと、古くからの伝統様式を意識して作られた一群と、現代の備前に主流のオーソドックスな形、また柔らかく、あるいは控えめに個性が現れた作など多彩だ。今後、どの方向に焦点が絞られるかは定かではないが、その解答は作者の内にしかないのだから、時を待つしかなさそうだ。
最後に少しだけ、作者のプロフィールに触れておくと、大手の食品会社のサラリーマン生活を37歳で辞め、森陶岳氏の窯に修業に入り、独立している。初窯の窯出しをした折には、もう40歳代の半ばだったという異色の経歴だ。偏見なく、今後の創作活動を注視していきたいと思う。
上左●本展には7回目の窯出しによる、小品を含めておよそ100点ほどが展示され、ファンら観客で賑わっていた。上右●玉垂れが美しく流れた壺には、多様な発色も見られて興味深い。活けられたモミジが引き立ち、涼味を誘っていた。