展覧会への招待

Exhibition previews & reviews

  • 2010年4月 1日~2010年4月23日
  • 藤平 寧 陶芸作品展
  • Exhibition of FUJIHIRA Yasushi / K-HOUSE (東京都文京区千石 TEL.03-3941-4147)

 いつも藤平寧(ふじひら やすし)氏の作を見ていて思うのは、この人ほど器を作ろうとか、用途のない造形作品こそを、などと限定しないで、自らの活動範囲を狭めたり封じ込めてこなかったろうということだ。むしろその間を自由に動き回り、いとも軽々と往き来して成果を上げてきたこんな作り手は、そう多くないと思える。オブジェを作らなければという気負いもなければ、伝統様式にだけ拘束される息苦しさも感じられなくて、実に柔軟な身の構えなのだ。そんな幅のある境界線上を、ずっとひとりで歩いてきた作者らしい器を中心にした新作が、本展で展示されている。
 手捻りで形作られた器は、皿や鉢として用いるには素地にやや厚みの足りないような感じがするものがある。こうした独特な、はかなさのような気配が伴うのが藤平作品の特徴のひとつだ。薄作りの表面はわずかにデコボコと波打ち、ボディがやや歪んで作られているために、それぞれの作は少しずつ小首を傾けたようにも見え、組みものであっても形はかなり違っているものもあり面白い。まるで森の中に転がっていそうな木の実を割ったような形の鉢や、樹々の種や枝先についた水滴にも似た姿をしていたりして、いずれも見る側の情感に滑り込んで来るような器ばかりだ。そして実際に、たとえばそれらの器に料理などが盛られている様子を見ると、涼し気に見えて深い興もある。使用後に、洗ったり収納を考えると少し扱いに神経を使わなければならないとも思えるが、そこまでを含んで、これらの現代を呼吸した個性的な作と接する機会を、楽しみに受け取っているファンも多いようだ。
 もうひとつの特徴は、装飾としての色だ。黒と金、黒と銀など、くっきりと鮮明にツートンに塗り分けられたものがある一方、釉が混じり合ってとてもなに色とはいえないような淡く繊細で、複雑な色使いのものが見られて魅力的だ。ところが素地土の自らの色や金・銀泥彩をのぞくと、本出品作に使われている基本となる釉薬の種類は4種類ほどだと教えられ、少し驚いた。会場に並べられた作が、多彩に見えて映るからだ。
 また実用の器なのだからと、とくに手にとって使う種の重量感はこれまでも作者の中で慎重に考慮されてきた。それらに加えて、最近意識しているのは作品のサイズだという。現代の器としての大きさもさることながら、自分らしさを現しやすいベストな大きさなども視野に入れながら、料理を盛る器としての美的サイズも追いかけているのは、いうまでもない。
 なお会場の壁面には、掛け花入やオーナメントとしての造形作品も展示され、作域の広さとセンスの良さの一端が窺える展覧になっている。

上左●まるで、どこかの風景を立体的な絵に描いたような器作品の連作「水のうつわ」。(中央の円柱型の作品の発表価格=52,500円) 上右●美しい虹色にも見え、あるいは真珠色にも輝いている皿(前)は、銀泥を塗って得られた効果という。

■ギャラリートーク「うつわって面白い」
作者自らによるギャラリートーク「うつわって面白い」が、4月17日(土)15時から同会場にて開催されます(予約不要)。

1963年京都に生まれる。87年関西大学卒業。88年に京都府立陶工訓練校修了、同年日展入選。92年に陶芸ビエンナーレ奨励賞受賞。全国で個展を中心に活動中。
「ふたり(a・b)」と題された組み湯呑み(21,000円)。作品タイトルを読むのも藤平作品鑑賞の楽しみのひとつだ。
壁面に展示された「月輪」(42,000円)は造形作品。
美しいフォルムを保ちながらの「揺れ」がこれらの作の醍醐味。器を中心にしておよそ100点ほどの新作が展示された。