展覧会への招待

Exhibition previews & reviews

  • 2009年7月25日~2009年7月30日
  • 松田米司 陶展
  • ギャラリーサンキエーム (松山市三番町 TEL.089-931-8100)

「如何に内地の場合とは違って凡てが自然であり、純粋であり、誠実なものである」と柳宗悦(YANAGI Muneyoshi 1889-1961)は「琉球の富」(1939年)のなかで、沖縄のやきものを見た感想を書く。
 沖縄のやきものは、南・北から、また西側からも伝わってこの島で交わり、4、500年を経て独特の様式を作り上げてきたと考えられている。本州や九州などの陶産地にも広がった多様な技法が使われてきたが、形や装飾には産地に特有のものが継承され、また作者・松田米司(MATSUDA Yoneshi)氏の明かな個性が濃厚に感じられる作が出品されそうだ。
 松田氏の作るやきものは、沖縄県中頭郡読谷村にある工房で作られ、共同窯で焼かれている。この窯は4人の作り手により、共同管理・運営されている大窯であり「北窯」と名付けられている。古くからこの地は様々な土を産し、泡盛の甕などに用いられてきた琉球南蛮が焼かれてきた土地としても知られている。この窯では、それらの土、釉などの素材作りから焼成まで、また伝統的な技術などを一貫した工程・システムとして受け継ごうとし、そして、現代に活かされる器作りを制作の基本理念においている。
 そんな環境下で作られる松田氏の作る器の特徴のひとつは、使いやすく丈夫で、健やかであり、土地柄を深く呼吸しているように感じられる。落ち着いた、また時に鮮やかに発色する釉が施され、そして単純な模様を装飾としていながら、それは現代の感性をほどよく映しているパターンであることが多い。
 たとえば、ただの点や円、すーっとした釉の流れ、あるいは大胆な波模様などであることが多い装飾は、一見、ぶっきらぼうかも知れないが、食卓に並ぶと異彩を放ってシャレている。たくさん作ることから学んだ手練れはもちろん、この作り手ならではの美意識があってこその意匠だ。そしてこれらの作が優れている証は、長く使っても飽きず、それどころかいつの間にかなくてはならない器に育っているということだろう。
 そしてもうひとつの魅力は、価格が極めて廉価に抑えられている点だ。そのものの持つ価値と価格の伴わないものが世の中から厳しく淘汰されつつある時代にあって、かねてから松田氏はこのキャリアにして、いつも謙虚にあり続けようとしてきた。きっと、多くの犠牲のうえに成立した発表価格ではあろうが、これでこそ価値ある「民の器」と思え、多くの共感を呼んでいる。
 「私はなに人か?」「どこから来たか?」と絶えず問い続け、沖縄を決してないがしろにせず大切にしたいと思う作者の信条が、その土地固有の素材を選んで感謝しつつ用い、結果として、使いやすく、親しみやすい形と模様のやきものを生んでいるのだと思わせる。
 本新作展では、鉢、皿、ピッチャーなど日常に使えるものばかり、100余点が出品される予定という。

上左●シークワーシャーの浮かんだ冷たい水がいかにも似合いそうな「ピッチャー」H30.3㎝ (発表価格=7,350円)は、もちろんどんな使われ方だって許容範囲だ。

上右●流れた釉が素朴でパワフルな「一尺皿」W30.3㎝(発表価格=12,600円)。

丸い文がとても可愛らしい「皿」W13.6㎝(発表価格=1,260円)は、超ロングセラー。
飛び鉋の模様のみならず、単純に見えながら手数をかけて作られる「浅鉢線彫り絵付」(発表価格=3,675円)は、しかし、使う人に気遣いをさせない。
「角皿」(発表価格=2,100円)は、北窯で焼かれる作のなかでもとくにモダンな感覚を持っていて、ポップな魅力があって楽しい。
「ワンブー」W18.2㎝(発表価格=2,100円)。濃紺の、荒々しく描かれた文様は珊瑚礁の波だろう。涼しげに感じられ、夏にこそふさわしい鉢かも。