展覧会への招待

Exhibition previews & reviews

 昨今の、美濃地方を主な発信源とする「うつわブーム」の中枢のひとつは、多治見市陶磁器意匠研究所の修了者たちの制作によって支えられている。このふたりもその一端を担い、同期生として意匠研で学んだ。独立して10年を過ぎようとする今、作家としての制作の方向性も定まってきているようにみえる。
 川端健太郎氏(KAWABATA Kentaro)は磁器土を用い、手捻りによって器やオブジェを作る。やや歪ませた器の形は、自然な動きが損なわれない程度に整理しまとめられていて、器種によっては、そこに鎬(しのぎ)や削りを施し、個性や強さが付加されている。また、花入や水滴などでは、作者なりの機知をきかせた造形的解釈、あるいはアレンジがあって興味深く見られた。とはいえこの作り手の持ち味は、とくに装飾にあると思われた。あらかじめ素地にガラス片を埋め込んで焼成したり、抽象画を描くように筆で釉を置き、それが流れて溶け合う結果を予測しつつ、慎重に制作されている。なかでも出色だったのはスプーンだ。南国の白い砂浜にでも半ば埋まっていそうな、自然物に近い色と、屈託のない自由な形をしている。ここに作者の特徴と魅力、そして実力がぎゅっと凝縮されているのでは、と感じた。
 一方の横山拓也(YOKOYAMA Takuya)氏は、長く粉引(白化粧)による器を追いかけてきた。ロクロによって美しく成形され、シンプルな潔い形が基本におかれている。ところが、縁作りや口辺などではシャープさがはっきりと感じられるように意識され、強調し、リズミカルに仕上げられていることが多く、心地よくメリハリが効いている。また、白化粧はタオルなどにふくませて素地に押しつけながら塗られており、それによって伝統的な粉引とは異なる、独特の素材感が得られている。
 作者によれば、眉間に皺を寄せつつ「芸術的な表現」を叫ぶというよりも、今は作品の醸し出す「たたずまい」、つまり、作品自体が自ずと漂わす雰囲気や、柔らかな存在感のようなものに、創作の視点が置かれているという。その感覚こそを大切にしようとする制作姿勢だ。長く仕事を続けていけば経験が育まれ、人間的な成長も、技術も、また感覚も集積されて、やがて創作の糧となることを知っているのだろう。
 作り手のこうした様々な思いと、器を見る観客との相互の感覚の一致が、今の器人気の底に流れている「信頼関係」のようにも感じられた展覧だった。

上左●本展会場ではこの2作家による3年振り2回目の展覧となった。
上右●左が横山拓也氏(1973年神奈川県に生まれ、98年に立教大学卒業)。右が川端健太郎氏(1976年埼玉県に生まれ、98年に東京デザイナー学院卒業)。そしてともに2000年に多治見市陶磁器意匠研究所を修了し作家活動に入った。

造形的なメリハリが鋭く効いた横山氏の作。作品が放つ「たたずまい」を大切に作られている。
揺らぎの感じられる「カップ&ソーサー」(発表価格=7,350円)は横山拓也作。こころが動かされるような軽やかさが楽しい。
自然物であると思わせるほどの見事な人工の極み。素材感と装飾性が個性的で印象深い「スプーン」は川端健太郎作。
器とオブジェの境を苦もなく往き来し、その間から生まれる川端作品にはまるで屈託が感じられず美しい。「しのぎ鉢」(発表価格=23,100円)