
0072号
2012年01月26日更新
会場に入ってすぐ、ハッとして、ややたじろぐように足を止めてしまった観客も、きっと多いのではないだろうか......。「童」と名付けられた作品群が、訪れた人々を一斉に見つめるような場所に展示されているからだ。そしてこれらの作には明らかに「目」がつけられているから、ちょっと驚いてしまう。
多分、「ようこそいらっしゃいました」と、寡黙な作り手になり替わって歓迎のあいさつを作品にさせている、とでもいうのだろう。観客たちはまんまと作者・伊藤慶二氏(ITO Keiji)の予測通りの行動をとってしまうことになりそうだ。しかし、こういった上質なユーモアが、この作者に特有の要素としてこれまでにも作品に組み込まれていることは多かった。
会場内の主作品は「場」という作だ。仏足と邪念のイメージとを表現しインスタレーションとして展示している。こういった宗教的なテーマには以前から積極的に取り組んでおり、今回の新作展でもそれらを発展・展開させたような作が確認できる。たとえば、「ひとかた」や「塔」という小品にしても、また、低い位置に置かれた「築」なども、禅的な世界観を象徴的に扱った作品と見える。またとくに今回の展覧では、会場構成まで作者本人によって行われたといい、作品単体はもちろんだが、空間全体の雰囲気からスピリチュアルなものを感じ取ることも重要かもしれないと思われた。
陶の立体造形から器作りまでを、緩めず、分け隔てることなくひとつの表現活動と見なして取り組む伊藤慶二氏の姿勢には、同業者であるプロの陶芸家らからも信頼が厚い。素材や技術を尊重する仕事、また創作者としての視点や感覚の鋭さが作品から感じられるからだろうかと、本展を見ていて改めて思った。
上左●「場」(発表価格=1,050,000円)は仏足と邪念が組合わさってひとつの作品に構成されたインスタレーションだ。
上右●会場入口を見つめるように展示された「童」(発表価格=472,500円)たちが、訪れた観客を出迎える。