
0072号
2012年01月26日更新
昨年、2008年12月に急逝した吉田明氏(1948-2008)の追悼展が開催されており、幅広い層に人気のある陶芸家なだけに、故人を偲ぶ多くの観覧者で賑わっていた。
修業時代の若い頃、かつて大陸からの技術を導入して開窯した九州の諸窯を廻って学び、また、各古窯跡を発掘した経験が作家としての方向を定めて、基礎となった。初個展(1974年)の折に、当時工房があった東京都八王子市の土を用いて作ったのは三島、粉引、刷毛目だったし、それらはその後も作り続けられて終生の変わらないテーマとなった。
本展においても定番作品を中心に、絵唐津や黄瀬戸、柿の蔕などの高麗風な茶碗、焼締めと、奥行き豊かな茶陶作品100点ほどが並べられた。とくに熱心に取り組んでいた得意の三島や刷毛目などの作は、丁寧に細工が施されていながら、手際のよさがあるために堅苦しい仕上げにならないのが真骨頂だ。また粉引は素地としっかりと馴染んでいて、化粧土の剥がれなどもなく作りに余裕が感じられるのが魅力だ。しかも14歳の頃からの経験を積んだ焼成技術により、新作でも古色を帯びた表情となって窯出しされるため、大方の愛陶家や茶人らにとっては、泣きどころを押さえられたような心地になるに違いなかったろう。
器用、手練れの作り手であったが、背後には、ただそれだけではない土や釉などの素材、ロクロや装飾技法、窯や小さな道具ひとつにもこの人なりの合理的な工夫があったことは見逃せない。歴史を含めて、とくに朝鮮半島と日本を結んだやきもの全体をいつも視界に入れつつ作った陶芸家の、60年の生涯を振り返ってたどる思いの展覧だった。
上左●礼賓三島を彷彿させるように象嵌文が細密な「三島茶碗」(発表価格=189,000円)。故人が作ると焼き上がったばかりの新作でも、いにしえの雰囲気を漂わせる。
上右●メディアにもよく登場し人気のあった作者なだけに、会場には観覧者が次々と訪れていた。