展覧会への招待

Exhibition previews & reviews

  • 2009年5月20日~2009年5月26日
  • 美和隆治 作陶展
  • 松坂屋本店 (名古屋市中区栄 TEL052-251-1111)

 美和隆治(MIWA Ryuji)氏のこれまでの主要な個展は、いつも本展会場で開催されてきたが、前回の個展が開かれてから4年を経て、やっとこの新作展に漕ぎつけている。もっとも、美濃古窯で古陶片を発掘しながらやきものの研究をはじめ、それから初個展が開かれたのは30年後だったことを思い起こせば、ファンにとっての4年間はそう長くないのかも知れない。
 今展でも仕事の中核となっている茶碗は、紫志野、紅志野、志野、絵志野、鼠志野、黄瀬戸、瀬戸黒、美濃伊賀、黒織部の9種類が出品の予定という。なかでもとくに人気があって注目されるのは、やはり紫や紅、赤などの志野碗だろう。とはいっても美和氏の作る志野は、焼成中に様々に窯変し、極めて変化に富んだ発色を見せるのが特徴であり、それが大きな魅力になっている。造形は意識的に歪ませることはあまりなく、やや横に拡がった形に独自性が際立っている。また、志野茶碗でもうひとつ注目したいのが鉄絵などの装飾だ。あるものは風に舞う葉のようにも見え、時に抽象絵画のようにも感じられ、別の絵では古代文字とも見紛え、興味深い。このことは、青年時代に洋画家として活躍していたキャリアと、決して無縁ではないと思える。
 もうひとつ本展で注目されるのは、タイトルに「作陶展」とあることだ。茶碗が中心の発表ではあるが、黄瀬戸や鼠志野、美濃伊賀などの花入に加え、灰釉の鉢、志野のぐい呑なども出品される予定だからだろう。とくに黄瀬戸を用いて竹の一重切の形を模した花入は、ためらいのない箆目が入った造形的な力強さと、竹の写実性が相俟って見どころの多い作に仕上がっている。枯淡の作域に入りつつも、一方で、作品に活き活きとした生命感が失われないのは、この作り手の執拗さだと感じる。総出品点数は30点あまりの予定、期待通りの新作展になりそうだ。

上左●「灰釉鉢」H17.2  W29.0㎝(発表価格は525,000円) 上右●「紫志野茶碗」H9.4 W14.0㎝(同787,500円) ともに2009年