展覧会への招待

Exhibition previews & reviews

 同世代の女性陶芸家によるグループ展が開かれている。作者は朝倉晶(ASAKURA Akira)さん、岡野里香(OKANO Rika)さん、樺沢美子(KABASAWA Yoshiko)さん、野上薫(NOGAMI Kaoru)さんの4名だ。岡野さんのみは今回、陶芸の傍ら制作を続けているというバッグでの出品、他の3人は陶による器を発表している。本展の特徴は、テーマに「こども」が加わっていることで際立っている。展覧会としての切り口もそうだが、女性作家にとって子供を意識して創作するのは、とても自然で、しかも力強い制作の動機になると、改めて思わされた。
 たとえば、野上さんは大人と子供の揃いの器を作っていて、だが、子供用の鉢やカップには白化粧を施し、食べ物や飲み物の色を見えやすくするなど、きめ細かな配慮がある。紐作りによって生じた器形の微妙な凹凸は、ひょっとしたら子供の手に馴染むグリップになるかもしれない。また、可愛らしい陶箱に見える蓋ものを出品する朝倉さんによれば、それは実は、子供の「乳歯入れ」という。たまたま歯科医院で見たものに着想を得て、作者なりに創作したものだ。白化粧の皿の形は、誰にでも親しみが感じられるように花弁を意匠のベースとしている。それらは、陶芸家と母のふたつの鋭い感性が結び合わなければ、なし得なかった仕事だろう。
 子供と一緒に食事をしたり、花入と花を見たりする視点をとくに意識し、型成形による作を出品している樺沢さんは、本展タイトルの発案者だ。使えるものを作りたいと自身の制作の方向性をはっきりと定め、今回の釉による落ち着いた発色と、丸味を帯びた優しいフォルムには、テーマに沿った暖かな心遣いがにじみ出ているようだった。
 これら子供を意識した制作は、どの器にもとても現実的な工夫があり、しかもそれらが、三者三様の美意識と個性によって絡め取られ、違和感なく受け入れられる作品に仕上げられている。子供のための器作りの将来に、新たな可能性が拓ける濃厚な気配があると感じさせられた展覧だった。
上左●子供にも使える器という視点から制作された3人の作者の作品。計280点ほどの作が並んでいた。 上右●左より、作者の野上薫さん、樺沢美子さん、朝倉晶さん。

雰囲気ある白化粧に特徴がある朝倉さんの作。この蓋ものは「乳歯入れ」(発表価格は2,500~3,500円位)。1990年に武蔵野美術短期大学部卒業。めん鉢大賞展、日本クラフト展など入選。
野上さんの作は紐作りと叩きが成形の基本。信楽土の黒泥とぐるぐるの渦巻きに特色が見える。1988年に多摩美術大学絵画科陶芸コース卒業。日本クラフト展、朝日現代クラフト展など入選。
最近、とくに釉薬に関心があるという樺沢さんの作。本展出品作には10種類ほどの釉を使用した。1990年に武蔵野美術短期大学部デザイン科工芸デザイン専攻卒業。イギリスに留学し陶芸を学ぶ。
制作の手法は作者それぞれ異なるが、共通するのはどの作もとても丁寧に作り込まれているということだ。2,000~3,000円台が中心的な価格帯で、お買い得感もある。