
0064号
2010年08月02日更新
掌のなかに包み込みたくなるように、優しげで、危うく、清潔感あふれた磁器の、緊張感漂う器を作る高橋奈己氏の新作展が開かれている。
これらの作の成形方法は、手捻りでもなければロクロでもない。最初、油粘土によって原型を作り、それを元に石膏型を起こしては作る「型作り」による作品だ。イタリアのファエンツァ国立陶芸美術学校に留学中、この手法のよさを知ったという。もちろん型を用いて作っても、量産化を前提には考えていない。ならばなぜこの成型法かといえば、陶土を削って完成形を目指すより、油粘土を少しずつ付け加えて、いわば彫刻的なアプローチによってじっくりと器形を探る方が、断然作りいいと感じているからだ。本展にはおよそ120点ほどの新作が出品されており、そのために制作された型は56個という。
作品の主なモチーフは植物の実など、自然のなかからヒントを見つけることが多いらしい。花のような、あるいは蕾とも思える形、果物の実にも似た作などがあり面白い。
本展では赤い釉が掛けられた作も見られたが、基本的に色には関心がなく素材そのものの白が選ばれ、また、作品のサイズは作者の感覚に一致した作りやすい大きさを追求するうちに、徐々に小さくなったという。この微妙な作品サイズが、作品に独特の緊張を生む主因になっていると感じられた。
これらの白い小さな磁器の器は美しく、緻密に、丁寧に仕上げられている。作者自身の内なる深みを探究しながら形作られ、独自の心象風景がそこに広がっていると思った。
上左●器だが鑑賞的な要素が強い作品が多い。左の作は7,800円、右は8,400円と値頃感もある。
上右●一部の土を欠いたことで、慈しみたくなるような表情を見せる「mi kakera」(発表価格は31,500円)