喜多村光史氏のポットはとても人気がある。今回の新作は注ぎ口がくねっと一カ所曲がっていて目を引いた。全体の形をシルエットのように見てみると、この「くねっ」がアクセントになっていてきれいだなと思った。しかしこれは形のためばかりではない。ギャラリーの方に聞いてみると、お茶が一気に出ない工夫でもあるそうだ。使い勝手への配慮も作者の美意識のフィルターを通すと、こんな意味ある形になる。このポットを目当てに会場をのぞいたファンもきっと多かっただろう。
けれど、実はポットより気になったものがある。それは皿だ。とくに平らな丸皿で白一色のもの。これが西欧なら「プレート」ただ1種類ということになるかもしれないが、会場には驚くほど、というか嬉しくなるほど表情の違う皿が並んでいた。その違いは、たとえばフチの幅や立ち上がり具合、平面の丸みの調子、見え隠れするロクロ目や素地の色などに表現され、微妙な感覚をくすぐられた。それに同じ粉引でも白くマットな質感から黄がかったものまである。さらに半磁土に白化粧を施し錫釉を掛けた作品は、喜多村氏の白の世界を広げていた。
作品にはどこか古き西洋のにおいもする。でも「白くて丸い皿」という枠のなかでこれだけ多彩に楽しませてくれるのだから、やっぱり根っこは日本の「器」だなぁ......なんて思ってしまった。もし1枚だけ選ぶとしたら、きっとワクワクと迷ったと思う。
左●注目のポットは今回白に加え赤、黒が出品されていた。8,400円~15,000円。右●皿やポットのほか、碗、鉢、カップ、花入などが並んだ会場。