展覧会への招待

Exhibition previews & reviews

 個展会場は、さながら小さな星々が散りばめられて輝く銀河のなかを眺めるようだった......。
 秋谷カヲル氏の新作展には、作者お得意のスプーン類、とくにコーヒーや紅茶用のキャディスプーン、ジャムスプーンを中心に、ケーキサーバーなどカトラリー類、またスプーン用のトレイやレストなど数多く展示されていた。個人ユースのものばかりでなく、サービングするための道具を意識した作域なのが今回印象的だった。
 素材は銀のみ。銀の板を切り、熱を加えず型に当てて槌(つち)で叩いて形作る。花弁やハートを連想させる有機的な造形があるかと思えば、グラフィカルな作もある。その多くは、円とカーブが巧みに活かされた独特の形状をしていて、愛くるしささえ感じてしまう。
 それらを仔細に見ると、どの作にも精緻な彫り模様が施されているのが分かる。作者によるとそのイメージは、日常目にしたものがすべて蓄積・混交されて生まれてきたものという。強いて挙げれば、中世のヨーロッパなどの雰囲気を持った、まさにエキゾチックな意匠であり、もちろん秋谷オリジナルだ。
 これらの作が総じて魅力的なのは、道具として使って楽しむのはもちろんだが、たとえば額装し壁に掛けて鑑賞することも可能で、充分にコレクションの対象になり得るということだろう。
 発表はおよそ年1度ほど。同ギャラリーで出会える。
上左●金属なのにアンティーク・レースのようなサーバー。素朴さと優雅さを合わせ持つ。上右●1点1点額に入れて見てみると、形や模様が際立って新鮮だ。「ジャムスプーン」7,560円
会場では、さまざまな使い方が提案されていた。
左に並んでいるのがティーキャディスプーンの数々。茶葉を缶から取り出すのに使う。
表面の微妙な凹凸に体温を感じ、思わず手に触れてみたくなる。
銀を素材に選んだのは「叩いた感触や音の響きが自分に合っていたから」と語る作者。