展覧会への招待

Exhibition previews & reviews

 これまでの、青白磁のピリリとした緊張感あるオブジェのイメージを持ったまま会場に入ったら、それは見事に裏切られた。およそ80点ほどの、信楽土を穴窯で焼成した叙情的な雰囲気のたっぷり漂うオブジェを中心に、織部釉による作品を織り交ぜた、林秀行氏の新作展が開かれた。
 ロクロ挽きした後、押したり叩いたり、膨らませたりしながら形作っていったという。いずれもサイズは10センチそこそこで、大きな作でも長辺は15センチほど。信楽は明るく緋色が出て、カラッと焼き上がっている。一方の織部釉の作品は約10点ほどが出品され、信楽の作に較べたらやや大きな、面を強調した形だ。釉の濃淡が表情に豊かなニュアンスを生んで興味深い。
 言わずもがな永く走泥社にあり、脇をきっちりと固められる堅実な役の同人だった。また陶芸家個人としてはこれまで、すでに申し分のないキャリアを積み上げてきている。
「(70歳を越えて)こういうものもいいかな、と思えるようになってきてね」と作者は笑う。ひょっとしたら、日本的な情感をまとった陶のオブジェ制作の継承と発展の可能性は、しばらくはこの人の手中に握られているのかも知れない、と感じさせるほどの内容だった。
上左●「しっぽの誘惑」「土筆のくしゃみ」 「小犬のえくぼ」......、各々に愉快な作品名が付せられた。上右●初の試みとなった今回の仕事を通し、新たな発見があったという。
出品作は滋賀県立陶芸の森・創作研修館で制作された。
信楽作品の発表価格は94,500円と73,500円のどちらか。