展覧会への招待

Exhibition previews & reviews

 会場の展示室の床には、黒く塗られた板が敷き詰められ、作者によって「夜」が演出されていた。そこに作品がポツリポツリと置かれ、それらをつなぎ合わせて全体として眺めると、確かに、夜の草原でささやかれる話がひとつの小さな物語となってつながっていくようにも見える。
 しかしそれら一つひとつは、決して能弁ではなくむしろ木訥な陶による小話であり、また微風にも震えるような感受性があればこその形だと思わせる作品だ。
 手捻りで成形されたこの土の造形は、板のように薄い家、羽の生えた階段、あるいは、天高く伸びた建物や器の異形など。一見するとはかな気な姿の、夢やお伽噺のイメージの断片とも思えるオブジェは、だが、どれも内側から染み出て来たように自然に、土の持つ強靱さを伴っている。もちろん作者の意志によって、素材から引き出されて表現されたものだ。
 その姿のはかない抒情と、素材が持つ強さとの隔たりのアンバランスさに、大きな魅力があるような気がする。
 安藤氏の作る形は、確かな技術に裏打ちされて出来上がっていて、しかもこれらの作とは、対話できる楽しみがある、というギャラリー主の言葉に、素直に共感できた展覧会だった。
上左●「夜の野原・点在する光」の物語がインスタレーションされたギャラリーの一室。 上右●土の素材感を残しつつも軽やかなイメージの形象に仕上げるのはこの作者の特徴のひとつだ。
「無題」W23.8㎝ 発表価格は7,000円
現在の作者の代表的な作品といえる。「無題」60,000円
「無題」W26.3㎝ 28,000円 作品価格が廉価に抑えられているのも魅力だ。
器状の形態の作やいわゆるオブジェなど、およそ30点ほどの新作が出品された。