
伝統的な美濃陶を焼く実力派・
吉田喜彦氏の個展が開かれ、熱心なファンが会場を訪れていた。志野茶碗を中心に、土灰釉茶碗、瀬戸黒茶碗、白化粧茶碗、それに亜米利加茶碗など、いずれも静かで落ち着きのある、いかにもこの作者らしい姿形の茶碗が展示された。
亜米利加茶碗は、今春渡米し、ポートランドやサンフランシスコの美術館でスライドレクチャーをする合間に、西海岸の原土に市販の土を混ぜて素地とし、当地で薪窯にて焼成したという作だ。どこで、どんな素材を使って作っても、円やかなゆったりとした雰囲気を観る者に伝える茶碗にしてしまうのは、ベテランの実力だと思えた。「茶碗は気持ちよく飲みたいものですから、カサカサしたものや、強く主張したのはあまり......作りたくないですね」という。形を包む空気のようなものを大切にして、意識して作りたいというだけあって、一碗一碗がそれぞれ趣き深く感じられる。なかでも赤志野や練込み志野など、とくに志野茶碗に多くの優品が見受けられ、見応えある展覧だった。
左●丸味を帯びた、ゆったりとした形の志野茶碗にこの作者の特徴が現れている。右●会場にて茶碗制作について話す吉田喜彦氏。