展覧会への招待

Exhibition previews & reviews

夕暮れの東京・神楽坂。路地の暗がりに灯りがもれ、光に集まるみたいにポツポツと人が吸い込まれていく。そこが「うつわの手帖CAFE」だとすぐにわかった。カフェといってもそれは展示会で、今年の春に出版された日野明子さんの著書「うつわの手帖【1】お茶」(ラトルズ刊)の内容を立体的にしたものだ。日野さんはクラフト関係の問屋業と展覧会の企画などで活躍中の旬な人。ご本人が店主をつとめるなか、本に登場したほとんどの作り手たちの器類が並んだのだから、ファンにはたまらなかったと思う。奥のスペースでは「日本茶 茜や」による出張カフェも営業。立ち寄った人たちは、ひと通り見て、展示中の器で緑茶とお菓子を楽しんだあと、また展示台に戻って気に入ったものを見つける。賑わいのなか、いつもの展覧会とは違う、どこかリラックスした風景が展開していた。
並んでいたのは、加藤財、藤平寧、工藤和彦、岸野寛、坂野友紀、山田瑞子の皆さんなど、作家ものの急須や湯呑み、土瓶、湯呑み、カップ、茶さじ......。著書のなかで日野さん愛用ということで、一際目を引いていた喜多村光史さんのポットには希望者が続出。初日に売り切れてしまったそうだ。

とはいえ、そうした人気・実力作家の作品に交じって、工房ものの製品が静かに置かれている。作り手の素顔と、「もの」の実力をよく知る日野さんらしいポリシーと潔さが感じられて、清々しかった。著者のツボにはまった解説付きだったのも、今回、"買い手冥利"につきた。
左●近ごろあまりお目にかかれない小笠原陸兆さんの鉄瓶も展示。右●会場には若いカップルの姿も目立った。

日替わりのお菓子は「豆腐白玉ずんだ」。「茜や」は日本茶専門の人気CAFE。東京都新宿区神楽坂6-22-201 (月・火・日・祝は休み)
工藤和彦さんの急須。本書によればこの独特の表情は北海道・旭川の土によるもの。
メレンゲのような白い釉が魅力の土瓶は岸野寛さんの作。12,600円。
会場となった神楽坂フラスコ前の看板。「うつわの手帖」は続編も出版予定だ!