
音が聞こえてきそう器に出会った。といっても鈴が入っているわけではない。音の元は磁器に描かれた絵にある。ピッピィ。ガサゴソ。ジャブン。見ていたら、そんな自然界の音が響いてくる気がしたのだ。
「GARDEN」と題された大隈美佳氏の新作展。並んだ作品は皿、カップ、ボウル、ポットなど、形はどれもすっきりとシンプルで、いかにもスタッキングがよさそうだ。特徴的な絵付は、多色使いのものと黒一色のもの2種類がある。いずれも草花、小鳥、木の実、動物などがモチーフ。たとえれば、カラフルな絵は「光の庭」、一転して黒い方は「闇の庭」、あるいは庭の片隅にありそうな得体の知れない暗がりなんかを想像させられる。不思議だったのは、色調の違うこれらの絵がどちらもウキウキと楽しい気分にさせてくれるところだ......。
実は作品は、カラフルな方は筆で自由に描かれ、黒い方はマスキングの技法で絵付されている。また、どちらも絵具の代わりに化粧土で磁胎に描かれたものという。つまり、色調の違いを生かすために技法を選び、さらに技法に合った絵柄を展開させていると見える。そこに作り手の繊細な表現力と確かな実力が感じられた。
近年、子供のための食器も手掛けている大隈氏。無邪気な作風の、「質実な器」を見た思いがした。
上左●植物のほか、ワニ、カエルなども登場する黒のシリーズ。大人も子供も好奇心をくすぐられそう。
上右●会場には食器のほか陶板も展示。まるで絵本の挿し絵を見るように楽しい絵付の数々。