展覧会への招待

Exhibition previews & reviews

 兼田昌尚氏は、山口県萩市の伝統ある窯元の8代目だ。つまり萩焼の窯元なのだ。なのにこの人の個展のタイトルには、「萩」や「萩焼」の文字が見あたらない......。
 出品された茶碗、水指、壺などの作品の多くには、美しい発色と質感を持つ白萩釉が掛けられ、また所々には登窯焼成の状況によって様々な窯変が現れ、装飾的な効果を生んでいる。一方成形はといえばロクロ成形に束縛されない、もしくは依存することを避けて、いずれの作も刳貫きという技法によって造形されている。土の塊を叩きつけて表情を探し、次に木の板などで叩きながら面や線などを顕在化させつつ、次第に形を完成に導く。その後、内部を刳貫いて器物として仕上げている。用いられる土は、萩に固有の見島土などだ。
 また会場奥には、萩釉が掛けられていない大作4点が出品されていて、目を惹いた。粉引を用いたという。伝統的に萩では茶碗などを作る際に使われてきた、いわゆる白化粧だ。それをごく薄く施し、土の動き、屈強さや円やかさなど、直截で多彩な表情を引き出すことに成功していた。
 作者は萩の窯元に生まれ、萩の素材を使っていながら「萩焼」のイメージを裏切り、つまり萩焼の範囲を拡大しつつ、創作としての陶の可能性に挑んでいる陶芸家なのだと思える。個展のタイトルに「萩」や「萩焼」がないのは、もちろん作者の自信の現れだとみえた。

上左●作者は江戸時代後期(1817年)に開窯した歴史ある窯元の8代目だが、作品はいつも現代的だ。  上右●ロクロ成形に依らないことで生まれる造形は新鮮で、ハッとさせられることも多い。

茶碗の造形は独特で、とくに割高台の形は忘れられないほど個性的だ。
土の存在感、様々な表情を引き出した大作には、粉引が掛けられていた。
小品など含めておよそ70点ほどが展示された。