● 神社に残る今土焼の面影

 東京都内には、今でも250名~300名ほどの陶芸家が、個人で窯を持って制作しているといわれています。とはいえ、伝統的な産地のように陶家が集中する場所とは異なり、あちこちに散在し、それぞれの作者によって固有の作が作られています。
 ではこれまで、歴史的に東京には地場のやきものがなかったかといえば、隅田川焼、高原焼、玉川焼などがありました。特に、東京東部を流れる隅田川沿いからは、かつて瓦を焼くための土が採れていたこともあって、陶器の産地が自然に生まれたようです。
 現在の東京都台東区浅草のほど近く、最近、縁結びの御利益から若い女性の参拝客が絶えないという今戸神社(右写真)があります。ここに江戸時代を代表するやきもの、今土焼発祥の地の碑が建てられています。
imado 3_edited-1.jpg 今戸焼は天正年間(1573-1592)に開窯したとか、また徳川家康(1543-1616)が入府の後に、三河から来た陶工によってはじめられたともいわれています。いずれにせよ、江戸時代には人気を得て隆盛し、瓦や土器、陶製の人形などを焼いていました。時代を経て生き抜き、やがて関東大震災(大正12年、1923年)や東京大空襲などがきっかけとなり、今戸界隈で仕事を続けていた職人たちは徐々に各地に転出していったようです。
 境内には1752年(宝暦2年)に奉納(1822年に再興)された、渋く黒光りする狛犬が今も残っていて、その台座には、土器屋とか火鉢屋、焙烙屋などの名称の元に、42名の当時の陶工の名が刻まれていて(下写真)、それらをはっきりと読み取ることができます。一人ひとりの名を辿って見ていくと、260年ほど前、確かにここでやきものが焼かれていたのだという実感が、足元からじわりと伝わってくるようです。
(三)2012/01/25
◎今戸神社(東京都台東区今戸1-5-22)

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● 感覚だけに流されない質実な器

 今や、もの作りとしての独立の地の選び方は、その人の作家観や人生観といっていいほど、理由も考え方も個性的で様々です。
  2011-06-28henshubu-asanuma3.jpg 先日、2年ほど前から、群馬県北部の沼田市で仕事をはじめた浅沼美奈子さんの工房を訪ねました。東京に生まれ、  九谷の窯元でみっちりと修行し基本を身につけてから各地を見て廻り、この地に独立したといいます。もちろん周辺に陶産地はなく、消費地もすぐ近くにはありませんが、自然が豊に残り、制作するのによい環境が整い、また暮らしやすさなども考慮したといいます。
    素材は主に、石川県などで採れた磁器土を用いていますが、それだけでなく、自らアトリエ周辺で探して見つけた土や陶石を混ぜ、独特なテクスチャーを得ることに成功しています。
 普段の食卓で使うのにちょうどよい実用的な器や、雰囲気たっぷりな照明にもなる茶香炉などを制作しています。装飾は染付を中心にし、伝統的な模様をアレンジしたもの、また、女性らしい柔らかさの出た装飾など、それぞれの器の形に合わせ、物足りなさもなく、また、うるさくもない程度に描かれています。
 飯碗をひとつ、ふたつと手に持ってみると、素地はちょうどいいくらいの厚みで、口造りや高台など、ピリリとしていてなかなか爽快な作域です(写真右) asannuma mesiwan _0099.jpg。意外だったのは、見た目よりもずっと高台 asanuma koudai _0218.jpg(写真左)への手がかりがよく、しっかりと作られていて好感が持てました。とはいっても、器全体の手取りは重くも軽くもないご飯を盛ってちょうどいいような現実的な実用性もあるのです。カップや蓋ものなど、なかには同世代の若い女性たちに共感を得られそうな作もあり、仕事の範囲はかなり幅広いように感じられます(写真下)。それに特筆すべきは、まだ発表価格が良心的で、とても廉価であることです。
 工房に置かれた棚には試薬瓶が並び、なかには近くで採取したという陶石などが入れられていて、素材作りから手掛けて、ここで作る証としての固有のものを作ろうとする浅沼さんの姿勢が見えるようでした。(M)2011/07/08
◎浅沼美奈子さんのHP(工房 吾も紅 http://waremokou375.web.fc2.com/asanuma cups _0101.jpg


● 日光下駄への憧れ

 かつて、日光の土産なら日光下駄、といわれていた時代があったといいます。アスファルトとコンクリートに囲まれた現代の暮らしでは、ほとんど下駄を履く機会のないのは現実ですが、それでも憧れだけはあるものです。遠い体験と記憶が、まだどこかにひっかかるように活きているからでしょうか。
2011-06-28henshubu-geta2.jpg 日光木彫りの里工芸センター(写真左)では、日光彫りの製品が並べられ、また日光下駄の製作を見学することができます。日光下駄は下駄と雪駄が一体化したようなところに特徴があります。もともと日光の社寺に参拝する際は、草履を使用するきまりがあったのだとか。それが江戸時代の下駄職人らによって、雪や坂道にも適するようにと、草履の下に木の台をつけた「御免下駄」が創案され、社内参入に用いられてきたといいます。後にそれらがさらに改良され、現在のような形になったそうです。
 足を入れてみると、カサカサとした竹の子の皮で編み込んだ草履表の感触が心地よく、これならば汗などで滑ることもなさそうですし、冬場はきっと暖かみも感じられることでしょう。長く日光下駄だけを愛用するファンもいて、ここでは草履表だけの張り替えにも応じてくれるといいますから、安心して履き続けることができそうです。
  2011-06-28henshubu-geta1.jpg とはいっても、街には和服姿は滅多になく、下駄や草履の出番はまずなさそうです......。それに今年の夏は、警備上の問題やら景気後退の影響もあってか、首都圏の花火大会は中止になるところも多いといいます。これによって、毎年の、浴衣を着る唯一の機会も失われてしまったかも知れません。
  昨今の日本人の生活様式のなかでは、よほどの変容と工夫をしたとしても、残念ながら、伝統のきものや下駄の生きる道幅はますます狭くなっていくばかりのように感じます。ただの憧れで終わるよりも、せめて近所への散歩の折には、下駄でも履いてみようと思うのです。(三)2011/07/05
◎日光木彫りの里工芸センター(日光市所野2848) TEL.0288-53-0070


● 山里の7つの窯元、足尾焼

11-06-17henshubu-ashio4.jpg    群馬県内で仕事をしている陶芸家を訪ねる途次、「渡良瀬」という美しい響きについ惹かれ、そこに観光気分もやや加わって、その流れに添って遡るコースをたどることにしました。 わたらせ渓谷鐵道の終着、間藤駅が観光センターを兼ねていると知って訪ねてみたら(写真右)、駅に大きく「陶芸」の文字があって驚きました。この静かな山里の町、日光市足尾町には、足尾焼を名乗る7軒ほどの窯元があり、現在もそれぞれのペースで活動中とのこと(写真下)。
  11-06-17henshubu-ashio2.jpg   ......となると、栃木県内には、益子、小砂(こいさご)、それに足尾という3つの陶産地を数えることができるのです。足尾焼は足尾銅山の閉山(1973年)をきっかけにして、地域興しとしてはじまったものといわれ、長く伝統のある産地ではありません。
    当初は、銅山から掘り出される土から、陶芸に適するものを選び素材にしようとした経緯もあったらしいのですが、銅の精錬には鉱毒事件など負の歴史もあり、器のイメージに重なるのはそぐわないことから、地元の素材はほとんど用いられていないのだとか。
    益子などの窯業指導所で基礎的な技術を習得した窯元もありますが、しかし、仕事の領域は囚われることなく闊達です。それが足尾のやきものの特徴のひとつといえそうです。

    毎年、春と秋には「足尾陶器まつり」(ゴールデンウィークと文化の日の前後3日ほど)も開催されていますから、日光への行き帰りに、また現在、世界遺産の登録を目指しているという足尾銅山(写真下◎渡良瀬川沿いに残る銅山の変電施設)など訪ねた折にでも、機会があれば立ち寄って見学してみてはどうでしょう。(三)2011/06/20

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● 大震災後の笠間と益子を歩く

  風薫る大型連休中、恒例の陶器市などが全国各地で開催され、賑わいをみせています。
有田(佐賀県)や美濃(岐阜県)など、西日本を中心にした各陶産地では、例年よりも多くの人出を数える産地もありなかなかの活況といいます。
    11-05-01 henshubu-mashiko1.jpgそんななか今年は、大堀相馬焼の「春の大せとまつり」(福島県・浪江町)は、産地の中心地が福島第一原発から10キロほどの立入禁止区域にあるため中止となり、また当初、震災の被害が大きく開催が危ぶまれていた笠間(茨城県)の「陶炎祭」、益子(栃木県)「春の陶器市」(写真2点とも 益子町内にて)は、期間をやや短縮するなどしてそれぞれ開かれ盛況でした。
  震度6強を記録した笠間、5強の揺れを観測した益子では、工房や販売店の製品が落ちて割れ、登窯やガス窯のレンガが崩れて多くが全半壊しました。笠間では製品の7割ほどが販売できなくなり、益子での損害総額は8億円ほどといいますから甚大です。かねてから交流のあった大堀相馬の作家が「陶炎祭」に参加して作品を発表したり、大堀と歴史的なつながりのある益子では、災害復興のステッカーを販売し、その収益金を浪江町に寄付、また陶芸を続けたい希望があれば受け入れるなど、組合や観光協会で支援に乗り出しています。
  11-05-01 henshubu-mashiko3.jpg広い地域で被害のあった今回の震災では、これらの産地  ばかりでなく、各地で個人活動する工芸家ら作者の多くも被害にあっています。
   日本の経済が低迷するのに歩調を合わせるように、工芸を芸術作品として収集するコレクターが漸減する一方で広がらず、日常使いの器に雰囲気を求めるファン人口も全体としては減少する昨今、制作者やマーケットに求められるのは厳しいことばかりが続きます。
  もとより粗製乱造は戒められるとしても、需給の関係で陶芸界でも作り手が淘汰される時代を迎えているとはいえ、文化としての日本の陶芸や歴史は支えなければならず、震災で被害を受けた作り手の再起と復興に、本誌でも精一杯の支援と協力は惜しまないつもりです。(も)2011/05/06


● 濱田庄司の側に近づけたような午後

 神奈川県川崎市高津区は、陶芸家・濱田庄司(1894-1978)が生まれ、眠る町として知られています。作家としての活動をはじめてからもイギリス、沖縄、そして栃木県・益子などに制作の拠点や窯を持ちましたが、本籍地は終生、高津区溝口に置かれたままだったといいます。なにか、考えがあったのでしょうか?
11-02-20henshubu-hamada3.jpg 人間国宝に認定され、文化勲章を受章した郷土の偉大な作家ですから、没後30年の折には川崎市民ミュージアムで大規模な展覧会(2008年)が開かれ、また現在でも溝口駅の周辺を歩けば菩提寺や記念碑など、あちこちに面影をたどることができます。
  そのひとつに濱田庄司の父の実家があり、江戸時代に創業された大和屋という老舗の菓子舗でした。5~10歳の頃、濱田は実際にここで暮らしており、幸いにも今は創業当時のまま同じ場所で、店は装いを転じて「ケーキ大和」として営業を続けており、馴染みの地元客らが間断なく訪れていました。
11-02-20henshubu-hamada2.jpg     たっぷりと外光が入り込む広々した店内は落ち着いていて、コーヒーなどを愉しむこともできます。ケーキを選んで注文するとすぐ、かなり長く使い込まれたであろう縁に柿釉が掛けられた皿(写真上)で振る舞われ、なんとなく得した気分。とてもいい感じのケーキ皿です。  また店内の一角には展示ケースが設えられていて、濱田の赤  絵作品や四男の濱田能生氏のガラス作品などとともに陳列されていました(写真左)。
    11-02-20henshubu-hamada1.jpg そんな独創的な作を見ながら思うのは、柳宗悦らとともに民芸運動に傾倒して民芸品を蒐集し、また、他方では人間国宝の認定の技術が「民芸陶器」とされたことも重なって、以降、濱田作品は民芸であるかのような誤りが、一部で生まれてしまったことです。
 ともあれ、巨匠の実家でお茶を飲みつつ、センチメンタルになるのも、あるいはノスタルジーに浸るのもよし。それが錯覚だとしても、歴史的陶芸家の側に、ほんの少し近づけたように思えた午後のひと時でした。(三)2011/02/19

◎ケーキ大和 川崎市高津区溝口3-13-5 TEL.044-822-4526

 

 


● 里山にひっそり点在する陶産地・小砂(こいさご)

 柳宗悦が「このほか那須郡に小砂(こいさご)と呼ぶ村があって窯が立ちます。材料はむしろ益子に優るのではないでしょうか」(「手仕事の日本」岩波文庫)と、書き残しているのが、ずっと気になっていました。たまたま近くに出かける予定があって、「小砂」まで足を伸ばしてみました。
10-07-27 henshubu-koisago1.jpg 現在の栃木県那須郡那珂川町小砂は、江戸時代には水戸藩領に属していました。窯業を興そうと考えた水戸藩主が領内で陶土を探させたところ、1830(天保元)年に小砂から良質の陶土が発見され、ほどなくして日用雑器などが焼かれはじめたといいます。また、明治後期には磁器も焼成されたようですが、これは長くは続かず、昭和時代に入ってから、再び陶器と磁器がともに作られるようになった産地です。
  10-07-27 koisago2.jpg 地図で調べると、常磐自動車道の那珂インターから1時間ほど。鮎で有名な那珂川を少し外れた静かな山間に、陶産地・小砂はひっそりとありました。現在でも8軒ほどの窯元が操業しており、いくつかの展示場や窯場は予約なしでも見学することができます(上・左写真)。飴釉や糠釉、粉引、青磁、灰釉などの日常に使うによさそうな器が、比較的求めやすい価格で並んでいます。
 また近くには、隈研吾氏の設計でよく知られる「那珂川町馬頭広重美術館」や馬頭温泉などもあり、町営「ゆりがねの湯」(下写真)などでも日帰り湯で気軽に汗を流すことができて爽快です。
 200年近い伝統を持つ小さな産地の窯元は、目に痛いほどの緑が広がる静かな里山のなかに点在していて、宗悦が訪れた往時を想像しながら歩くと、一層の感性を刺激され、思いのほか充実した1日になりました。(三)2010/07/27 10-07-27 henshubu-koisago3.jpg


● 加藤孝造氏が「瀬戸黒」で人間国宝に認定

 7月16日、文化審議会は、重要無形文化財保持者(人間国宝)に「瀬戸黒」の制作において高度な技術を持つ加藤孝造氏(1935-)(右写真)など、新たに5氏を認定するよう川端達夫文部科学相に答申しました。
10-07-20 henshuubu-kato.jpg 加藤氏は、5代加藤幸兵衛(1893-1982)と、志野・瀬戸黒の技術で人間国宝だった荒川豊蔵(1894-1985)に師事。桃山時代から伝わる技術、窯、釉や土作りなどを絶やすことなく継承させることを基本として、しかし制作においては、個性的で独自な作風を追求し、情感豊かな作品を作り続けてきました。
 今回の認定の対象となった瀬戸黒といえば、筒形の薄作り、高台が極端に低い作が桃山時代に作られた茶碗の典型的な作域ですが、加藤氏の作るものは、肉厚の、やや丸味を帯びたゆとりの感じられる独特な姿形をしています。それらが穴窯焼成による質感を伴った、漆黒の、気品ある瀬戸黒として焼き出されます。結果ばかりを先に求めるので

なく、そうした制作過程によってこそ生じるものを尊び、作品に活かそうとする創作姿勢は一貫しています。そんな、師ゆずりの自然体な創作と、加えて、美濃陶芸協会の会長などを歴任し、一方で私塾を主宰して後進の指導にあたるなど、美濃の陶芸界の発展に尽力したことも高く評価されての認定と思われます。今後の活躍が、ますます期待される陶芸家です。
 なお、その他の今回の人間国宝認定者は、「紋紗」の土屋順紀(岐阜県)、「友禅」の二塚長生(石川県)、「蒔絵」の中野孝一(石川県)、「鍛金」の玉川宣夫(新潟県)各氏です。(も)2010/07/20


● 青瓷のような名刺

 先日、久しぶりに浦口雅行氏お会いしました。
 現在の中心的な仕事は、「プレヴュー&レヴュー」欄でも紹介されている通り「青瓷」です。すでに陶芸ファンの間でも、すっかりとそのイメージは定着したようです。釉薬の技術的な研究も怠りなく重ねていて、次々と個性的な青瓷を発表し広く注目されている実力派の中堅作家です。
10-05-17 7henshubu-uraguchi.jpg 数年振りにお会いしたこともあってか、想い出話にも花が咲き、恩師・三浦小平二先生とのエピソードなど、いくつかの貴重な話を聞くことができました。それらの内容については、また改めて取材の機会をいただいて、本誌上で詳しく紹介したいと思っています。
  さて、ひとしきり話をした後の別れ際、名刺にご自身の携帯電話の番号をさっと書いて渡してくれました。その名刺(左写真)が、まるで「青瓷」なのでビックリ。色はもちろん雨下点睛のライト・ブルーですが、用紙には和紙が漉きこまれている凝りようで、これがまるで貫入のように見えるのです。名刺までも「青瓷」で、感動してしまいました! (M)2010/05/17


● 「陶器市」は全国を巡業する時代

09-11-10henshubu-ueno1.jpg 秋晴れの日の陽気に誘われて上野公園を散策していたら、噴水前の広場に「陶器市」と書かれた看板が見えました(右写真)。なに、何? と思って入口まで近づいてみます。すると主催は佐賀県物産市推進委員会とあり、有田・伊万里に唐津焼かと思ったら、備前、万古、九谷、瀬戸、美濃、笠間、益子焼まであるのだとか。なるほど、「全国大陶器市」に偽りはないようです。大きなテントのなかに、各産地の窯元や陶器商らが出店していて、日用食器から人間国宝の作まで、合わせて50万点もの品揃えといいます。
 なかに入って見てみると、まず佐賀県の特産、物産が並び、けっこうな賑わいです。小城羊羹、けいらんなど名物のお菓子類、そのほか嬉野茶、佐賀海苔といろいろ。その向こう側には、有田・伊万里の磁器、萩や美濃のやきものの間に、南部鉄瓶やら箸、塗り物なども並べられています。やきものは量産品がほとんどのようで、その分、価格は安価に抑えられていて、有田産の磁器の皿や鉢が、200円ほどから買えます。ほかにも、400円、500円とか700円などという1,000円以下の赤札が、派手に目立っています(下写真)。あちこちの店を見て歩くと、これはちょっと面白そう、というものもないことはないのですが、結局、見るだけに......。
 このイベントは、都市の公園などを会場にして、年間20カ所ほどを巡業する、いわば出前陶器市のようなものとか。産地の陶器市のように、値切って買い物をするのもありということですから、そんな掛け合いに楽しみを見つけたり、主催者がいう「安くて、楽しい」雰囲気を味わうにはいい催しかなぁ、と感じました。(三)2009/11/9

09-11-10henshubu-ueno2.jpg■佐賀の物産と全国大陶器市 ◎10月30日(金)-11月12日(木) ◎都立上野恩賜公園(東京都台東区上野公園5-20 大噴水前広場) 雨天決行


● 陶芸家が「情熱大陸」(TBS系列)で語ったこと

 各界で活躍する旬の才能を追いかけるドキュメンタリー番組「情熱大陸」(TBS系列)に、売出し中の人気陶芸家・青木良太氏が出演(10/25放送)しました。
 岐阜県土岐市の工房での制作や作品紹介、全国の若手陶芸家たちとの集会、自炊や食事、山中での土探しと鯉江良二氏のガス窯を借りての窯焚き、ニューヨークでの個展(Ippodo Gallery)......など、およそ9カ月間の取材をまとめたものといいます。
 これまでの陶芸家にはない「ニュータイプ」(小山登美夫氏)であり、頭にはいつも黒いターバンを巻き、耳にシルバーのピアス、工房ではラップを大音量で流しながら、壁に張り出した日本国旗に向かってロクロを廻す様子が強調されていました。
 そういうファッション性と、これまで作ってきたものが、伝統の様式に当てはまらずに感覚的で新鮮だったことが、日頃やきものにあまり興味を示さない人々にも注目され、関心を拡げているのでしょうか。
「陶芸界を活性化させたい」「自称・日本代表で」「世界のアートシーンで闘いたい」「僕は見たことのない器を作る」「今までの陶芸じゃないものを見たい」「新しいものが見たい」「止まりたくない」と番組中、作家は語ります。
 日本全国あちこちに個性的な陶芸家はいっぱいいて、優れたものを作る作者も少なからずいたとしても、テレビ番組に出演する機会を自ら得て、こういうようなことを語った陶芸家は、そう多くなかっただろうと思います。作り手としての経験はまだ浅くとも、そこには掲げられた理想と、静かな情熱があるように感じられました。
 その青木良太氏が、現在、新作展を開催中。どんな新しさが見えてくるのか楽しみです。(三)2009/10/26

■青木良太展 ◎10月26日(月)-10月31日(土) ◎桃居(東京都港区西麻布2-25-13) TEL.03-3797-4494


● くつろぎながら、居間で作品鑑賞する気分

09-10-18henshubu-yoshisuji1.jpg   これまで集めてきたお気に入りの品々ばかりを並べ、自宅の居間でゆったりと鑑賞しているような、ふと、そんな心持ちにさせられる展示スペースを持つギャラリーで、「吉筋恵治作陶展」(下写真は作者)を見ました。もっともこのスペースは、常時開放しているわけでなく、特別な催しの際に、通常のギャラリーに付加するようにして使われている空間なのだとか。
 それにしても、立ってやきものを鑑賞するという現在では当たり前なスタイルから、座り込んで、手にとってじっくりと作品を鑑賞できる場所は、あまり聞いたことがありません。当然、用途性の高いものならば、重さや触感は陶芸作品の評価の大切な要素となります。そういうことにも、自然と気づかせてくれます。そういえば、販売を目的とした場所でも、手にとって作品を持ち、確かめることを勧めるギャラリーもありますが、そのことを遠慮するように掲示が出されるところも、近頃では多くなりました。
 さて吉筋氏の新作はといえば、穴窯を駆使し、焼締めにテーマを絞って取り組んでいる作者ですが、今回はそこに新たな趣向を加え、施釉ものの碗や鉢などの食器が発表されていました。これらの作のほとんどはガス窯を用いて焼かれていて、なかには1客1,000円代からのものも見つかり、とても良心的な価格設定でした。(M)2009/10/20

09-10-18henshubu-yoshisuji2.jpg■吉筋恵治作陶展 ◎2009年10月17日(土)-10月25日(日) ◎ミリオンアートスペース(東京都目黒区八雲3-11-2) TEL.03-5731-8696

 

 


● 郵便ポストに届けられた「英和辞典」

09-09-11henshubu-takiguchi2.jpg 表紙に「英和辞典」と書かれた、興味がそそられる面白い展覧会図録が編集部に届きました。封筒には「滝口和男展」とあります。
 時代の風潮にかかわらず、常に精力的で、ハイペースを保ったまま作り続け、発表する陶芸家の筆頭に挙がるのが、滝口和男氏だと思います。今年開催された、また予定されている展覧会だけをみても、5月に新宿・高島屋、6月水戸・京成、9月に名古屋・松坂屋(9月15日まで開催中)、そしてその後、東京でのふたつの個展が続き、しかもテーマを各々変えて、次々に個展が開かれます。
 主な作風は「無題」のシリーズ、手捻りの造形的な作品、そして食器という3分野があり、その間を自由に往き来して作っています。今回の図録の作は、手捻りの、手のひらサイズの香合です。そしてそれらの作のタイトルが「英和辞典」のようにA~Zまでの順に並べられ、解説文は作者自身による語彙の説明や、あるいは子供時代の想い出、身辺雑記などエッセイ仕立ての文章もあり、読んでいて飽きません。
 たとえば「zig-zag」というタイトルの作品解説では、「人や稲妻などがジグザグに進むとか道や川などがジグザグに走ったり流れたりすること。実感としては我が人生の感かも」......などと意味深に書かれていたりして、滝口和男編の「英和辞典」の実際を、どうしても見てみたくなります。本展では、新作の手捻り香合ばかり60余点が展示される予定です。 (N) 2009/09/12

09-09-11henshubu-takiguchi1.jpg■滝口和男展 ◎2009年9月20日(日)-9月27日(日) ◎現代陶芸 寛土里(千代田区紀尾井町4-1 ホテルニューオータニ内) TEL.03-3239-0146


● 第56日本伝統工芸展の受賞者、入選者の発表

 先頃(08/25)、日本工芸会から速報として、第56回日本伝統工芸展の入選者と受賞者が発表されました。
 第1部会の陶芸から、第7部会の諸工芸まで、合計735名の作者の渾身の作が入選し、そのうち、とくに優れた16作品が受賞作品として選ばれました。なかでも陶芸は267名が入選し、賞としては、日本工芸会総裁賞に前田正博氏、朝日新聞社賞に神農巖氏、日本工芸会新人賞に中田博士氏の3作家がそれぞれ受賞しました。
 詳細は、日本工芸会(http://www.nihon-kogeikai.com/)のホームページから閲覧できます。(三)2009/08/29


● 「伊藤公象 WORKS 1974-2009」展を熱心に見入るのは、誰?

09-08-29henshubu-itokosho1.jpg 館内に若い女性がいやに多いと思ったら、東京都現代美術館では「メアリー・ブレア展」(~10月4日)も同時開催中です。ウォルト・ディズニー社で頭角を現し、絵本の挿し絵などでも根強い人気があるようで、あのディズニー・ランドの「イッツ・ア・スモールワールド」をデザインをした人だそうです。
 ......そんな華やかな賑わいを横に見ながら地階へとエスカレーターを降りると、「伊藤公象展」の展示室入口です。しかしここにも20~30歳代頃の女性か、または彼女に誘われてか、カップルで見ている人たちが意外に多くいてビックリ。
 広々した幾つもの展示室をゆっくりと見て廻ると、たとえば「アルミナのエロス(白い固形は...)」や「土の襞 躍る焼凍土」(下写真)に感じる迫力や美しさ、「土の襞-青い凍結晶-」の整然とした矩形のなかから発せられる蠢くような微熱など、この会場で作品を見なければ決して感じられないリアリティーやスケール感があって、ドキッ! とします。
 それから、入口で配られた本展鑑賞のためのパンフ「POCKET MAP」(東京都現代美術館 発行)と対照しつつ作品を見て歩くと、ぐっとアプローチもしやすくなり、ここに書かれた「よくある質問」など、観覧者の立場から見てうまくまとめられていて、このパンフによる手引きはとても強い味方になります。
 そして結局この日は最後まで、中年以降の男性、いわゆるオジサンとは会場内ではひとりも会わずじまいでした。伊藤公象氏の作品が、これほど女性ファンに関心を持たれているとは知りませんでした。そういう意味でも注目展かも知れません。(三)2009/08/29

09-08-29henshubu-itokosho2.jpg■なお「伊藤公象 WORKS  1974-2009」展のチケット・プレゼントは「プレヴュー&レヴュー」欄をご覧のうえお申込み下さい。


● 富本憲吉作品を寄贈した辻本勇氏のこと

 現在、兵庫陶芸美術館(篠山市)で「受贈記念 富本憲吉展」が開催中(~9月23日)です。
 戦後すぐ、故郷の奈良・安堵村に復員した辻本勇(1922-2008)氏が長兄に連れられて、富本家を訪ねて憲吉(1886-1963)と出会います。 09-08-05henshubu-tsujimoto.jpg敗戦直後の困窮期のことゆえ、当時は、ハイカラな富本も古い将校ズボン一本の着た切り雀だったといいます。しかしこの邂逅があって、富本への敬慕と情熱を下敷きにして、後に辻本氏は作品を集めることを決意し、やがて私財を投じて「富本憲吉記念館」を設立(1974年)するほど情熱を注ぎました。

    富本憲吉という陶芸家をますます世に広く伝え、業績を顕彰して残そうとした辻本氏は、作品収集ばかりでなく、多くの作品集や書籍なども編集・執筆し、貴重な資料を残しています。「近代の陶工・富本憲吉」(辻本勇著 ふたばらいふ新書 双葉社 1999年)もそのひとつで、巨匠・富本憲吉の生い立ちから最期までが、客観的にコンパクトにまとめられていて、作家の通史を知るうえで好著といえます。
 たとえば、柳宗悦らとともにはじめたとされる「民芸運動」は、実は......、というエピソードや、代表的な創作模様のひとつとなった「羊歯模様」が完成したときの、子供のような喜びようなど、人間味にあふれた一書です。
 なお辻本勇氏は、兵庫県内を中心に自動車教習所や書店などを経営した実業家である一方、谷崎潤一郎記念館、大阪文化財調査研究センターなどにおける文化活動にも尽力し、芦屋市文化賞を受賞(1997年)しています。(三)2009/08/06


● 浮かび上がって見える色絵磁器

  展示室に入ると、照明が薄暗く落とされたなかに幻想的に浮かび上がって見える色絵磁器がとても美しく、際立って見えました。
  09-08-01henshubu-maeda2.jpg     9月23日(水)まで、「赤 黒 金 銀 緑 青-前田正博の色絵」展(菊池寛実記念 智美術館)が開催中です。同展の展示の特徴は、日本の美術館にはあまり見られない、暁の頃の明るさ、または、たそがれ時のように、ほの暗い雰囲気のなかで作品が鑑賞できることでしょう。作者自身によれば「作品の素材感が、とてもクリアに見えて驚くほど」といい、観覧者たちの評判も上々のようです。展示室の照明のあて方が効果的に工夫され、前田作品の鮮やかな色や形に一層くっきりとしたメリハリが感じられます。
    またこの展覧会の関連イベントとして、「前田正博の歩んだ道」をテーマに作者と同館の林屋晴三館長による対談(8月1日)が行われ、前田ファンが集まり盛況のようでした。  その後、館内では作者を囲んだ会(右写真 左より林屋晴三館長、小池頌子氏、前田正博氏)が催され、母校・東京芸大出身者ら多くの陶芸家を中心に、収集家、美術館やギャラリー、メディアなど各関係者が参加し歓談が交わされていました。(T)2009/08/02 09-08-01hennshubu-maeda1.jpg


● 暑さに負けない沖縄発の陶芸......松田米司展/増田良平展

 沖縄に本拠地をおき、他の作家と共同窯を運営しながら活動するという、特異なスタイルを長く維持しながら制作してきた松田米司氏(1954-)の、松山市で開かれる新作展を「プレヴュー&レヴュー」で取り上げました。沖縄生まれの松田氏が、このような沖縄固有のヤチムンの制作システムや、伝統技術を受け継ぎながら、しかも現代的で、個人の創作としての制作を目指すようになったのは、大嶺實清氏(1933-)に入門したことがひとつのきっかけになりました。(写真は松田米司工房)
09-07-17henshubukara-matsuda.jpg そして同じく大嶺氏に弟子入りして学んだのが、増田良平氏(1976-)です。この作り手は埼玉県に生まれて沖縄県立芸大に進み、陶芸家としての独立の地を沖縄に選びました。沖縄を意識しながらも、即興的な、また装飾的な、どちらかといえば感覚を重視した仕事で、近頃、注目を浴びています。その増田氏は近く那覇市内で個展(陶・よかりよ 沖縄県那覇市壺屋 7月17日~7月26日)を開催する予定です。
 同じ師について学んだ経験があるとはいえ、出自も、世代も、作者としての方向もかなり違ってみえるふたりの陶芸家です。しかしそこには、沖縄から生まれるヤチムンの活気のような、多様性が感じられ、昨今、ヤチムンの厚みのようなものが出てきたのではないかと思うのです。
 どちらも暑さに負けない発表になりそうで、期待したいと思います。(M)2009/07/17


● 奈良千秋作の花器に、花人・唐木さちさんが野草をいけて展示

 長野県伊那市に在住し、主に、山野草をいけて活躍している花人・唐木さちさんによる展覧会「木曽路花会」が、木曽路美術館にて開かれます。
 本展は、美術館の地元・木曽郡上松町の花(町花)にもなっている大山蓮華の花に刺激を受けた唐木さんが、これを主な花材として、また、その他の初夏の野の花も取り混ぜて様々な花器にいけるという試みです。大山蓮華はモクレン科の落葉低木で、茶花としてもよく知られています。また、別名を「天女花」ともいい、純白な花弁にはいかにも高貴な雰囲気が漂い、淡い香りにも興趣があります。今年も同町の赤沢自然休養林に自生する樹々はいよいよ蕾がほころびはじめ、木曽路では今まさに、開花の時期を迎えようとしています。
 これら野の花々を、プレヴュー&レヴュー欄で紹介した奈良千秋作の花器、さらに同館所蔵品の李朝のやきものなどに、唐木さんがいけた姿を鑑賞しようという3日間だけの限定コラボレーションです。(T)2009/06/22

■唐木さち「木曽路花会」 ◎2009年6月26日(金)-6月28日(日) ◎11:00-16:00(初日=13:00より) ◎木曽路美術館(長野県木曽郡上松町)TEL.0264-52-2554


● 「七夕の宴」が開かれる2つ星の窯元

 美濃の名窯・幸兵衛窯(下写真)にて、「七夕の宴」が開催されるという案内をいただきました。幸兵衛窯(岐阜県多治見市)は江戸時代後期、文化年間に初代加藤幸兵衛によって創窯された歴史ある窯です。 09-06-17-kobeigama.jpg染付の食器を作って江戸城へ納める御用窯としての役も担っていました。現在の当主は7代加藤幸兵衛氏(1945-)が務め、熟達の職人たちを指導して定番の染付、赤絵、地元の伝統・志野、織部、また先代(6代加藤卓男)が取り組んで完成させたペルシャ三彩や色絵などの器作りを受け継ぎ、窯の火を護っています。
  この伝統ある窯元で、おりひめとひこぼしの出会いがあるかどうかは分かりませんが、当代幸兵衛氏を囲んでの「幸兵衛窯 七夕の宴」が予定されています。第1部では幸兵衛氏の講演会、2部では当代を囲んでの食事会という趣向だそうです。
 それから、本年3月に発売された「ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン(仏語版)」にて、「幸兵衛窯」が2つ星を獲得しています。窯元としては九州・唐津の中里太郎衛門陶房が1つ星を得ているだけで、ほかには見当たりません。観光名所としてミシュランのお墨付きとなった窯元でもあります。(三)2009/06/17

 

■「幸兵衛窯 七夕の宴」 ◎2009年7月4日(土)、7月5日(日)   *両日とも先着70名にて締め切り ◎午前11時より ◎幸兵衛窯(多治見市市之倉町)にて ◎会費=10,000円 ◎申込み・問い合わせ=幸兵衛窯 TEL.0572-22-3821


● 「前田正博の色絵」展 チケット・プレゼント+「菊池寛実記念 智美術館」ワンポイント・ガイド

 本誌「プレヴュー&レヴュー」欄にて紹介している「赤 黒 金 銀 緑 青 -前田正博の色絵」展(6月27日-9月23日)は、「菊池寛実(かんじつ)記念 智(とも)美術館」において間もなく開催されます。この美術館がオープンしたのは2003年ですから、まだ訪れたことのない読者もいるかもしれません。ここでワンポイント・ガイドをしておきます。
 虎ノ門方面からならば江戸見坂を登った高台に、ホテルオークラの並びという首都の中心域に立地しています。アクセスは地下鉄ならば、日比谷線、銀座線、南北線の3線が利用できます。とはいっても美術館周辺は信じられないほどの静かな、落ち着いた環境にあり、それはこの館を演出する舞台装置として魅力のひとつになっています。
 入口の門を一歩入ると美術館の敷地です。特徴となっているのは門から地下の展示室に至るまでの間にも、いくつかの作品が見られることです。鋳金家の北村真一氏のデザインした金属と石によるアプローチやドア、館内に入ってすぐ、エントランスの壁面を書家の篠田桃紅氏の作が飾り、ガラス作家・横山尚人氏が制作したのは螺旋階段のガラスの手摺り、展示場入口の燭台や銅製の壁面は畠山耕治氏によるもので、建築と一体化した作品が鑑賞でき見逃せません。
 また同館ではこれまで、陶芸を中心にした工芸の良質な企画展が次々に開催され、関心を集めています。開館以来の主要な企画展は、藤本能道(1919-1992)、藤平伸(1922-)、樂吉左衞門(1949-)、杉浦康益(1949-)、小池頌子(1943-)、14代柿右衛門(1934-)、加藤唐九郎(1898-1985)ほか、それに染色家・芹沢銈介(1895-1984)や漆、ガラスなど。物故巨匠から実力の人気作家など好企画が続き、工芸館としての個性的な活動が際立ち全国的にも知られるようになってきました。さらに陶芸の一般公募「菊池ビエンナーレ展」を開催し、日本の現代陶芸の育成と向上に大きな貢献をしている点も特筆されます。
 それから、館内には本格派の食事ができるレストラン「ヴォワ・ラクテ」があって、ランチ(11:30-14:00)時なら日本庭園を眺めながら楽しめます。ティータイム(14:00-18:00)もありますから、展覧会を見たあとはここでゆっくりと過ごせます。
「前田正博の色絵」展を、同館を訪れるきっかけにしてみたらどうでしょう。(Ka)2009/06/12

■なお「赤 黒 金 銀 緑 青 -前田正博の色絵」展のチケット・プレゼントは「プレヴュー&レヴュー」欄をご覧下さい。


● 「吉田明 追悼展」にて

 陶芸家の吉田明氏が、昨年12月に急性心筋梗塞で急逝(享年60)し、追悼展(下写真 2点とも)が開かれています。
 20年ほど前、アマチュア作陶家向けの技法書、なかでも電動ロクロの技術にテーマを絞った書籍を編集した際、吉田氏に主要なページを担当していただいたことを思い出します。それまでに何度か見る機会のあったロクロの技の確かさや、装飾など制作に対する独特な工夫があって感心したものです。そしてなんといっても、相手の気持ちをとらえるような教え上手だったから、お願いしてみようと思い立ちました。
 するとすぐに、こちらの趣旨を汲み取って面白がり、技術の公開は惜しげなく、熱心に取り組んでくれました。その甲斐あって、刊行された本は明解な切り口で分かりやすいと、読者からの評判がよく版を重ね、作陶書ブームの先駆けとなったといわれています。
yoshidaakiratsuito-2.jpg 器用な教え上手の陶芸家は、また鋭くものを見る観察者でもありました。たとえば、故人に後から聞いた話ですが、ある茶会に招かれた時のこと。強い存在感というか、エネルギーを発散する茶碗を見た、というのです。それはまるで淡く幽かに人魂でも漂うかのように、亭主の手から客の掌に尾を引きながら渡っていって、目が釘付けになったのだと。その場ですぐさま茶碗の作者を訊ねると、それは思った通り、長次郎だったと興奮気味に話していました。古く優れたものを、直感的に受け取ることのできるタイプの陶芸家でした。古来から伝わる名品や、発掘された陶片などに触発され、なぜそうなったかを考えながら作陶していたような気がします。
 そして、人としての喜びと痛みをよく知っていて、そんな感受性があるわりには、しかし作る時には感傷に流されず、いつも冷静でした。
  確かに、60歳は少し若すぎると思います。でも、文子夫人のいうように、陶芸家としての仕事はまだ「途上であったにせよ、楽しく幸せな人生だった」と、今はもう思うほかありません。ご冥福をお祈りします。(も)2009/05/30

 

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● 懐かしさから切り出された現代の「味」

 「プレヴュー&レヴュー」欄で紹介した清水なお子さんの展覧会を見たその足で、すぐ近くで開かれている土井善男さんの個展会場(下写真)(2009/5/23-5/31 草堂 TEL.03-5453-6046)に向かいました。ふたりとも京都精華大で陶芸を専攻して学び、今は生活をともにし、互いに刺激し合いながら制作している夫婦です。
 土井さんの出品作は、乳白釉と緑白釉という2種の白い釉を基調としたシンプルな装飾の、またミニマムでストレートな造形の器です。すっきりと仕上げられ、和・洋どちらの設えにも用いられそうな、今の日本の多様な食生活や感覚に適応した器だと思いました。もちろん将来の方向は未知数ですが、控え目な表現ながら、でも作者の繊細な感性を器作りに投影した仕事だと感じました。

henshubukara-doiyoshio.jpg  ところで、最近の若手作家による器の潮流として、2、300年前の日本や朝鮮、オランダなど西欧でかつて作られていたものの美点を取り込んでアレンジしたり、また、異素材の器の表情を陶で置き換えるような、感覚を優先して作られる実用的な器があります。そうして作られた器はもちろん工業的な量産品でなく、伝統的な器職人の仕事やクラフトとも趣が異なり、さらに、個性が表出された創作としての表現とも思いにくいのです。これまでもやきものの歴史が繰り返してきたように、「懐かし(古)さのなかにあるシャレた味」だけを、新しい作り手が時代の感覚で切り出し、器作りに反映させようという辺りが制作の意図かもしれません。
 もちろん、器を選び、使う側からすれば、そういう実用本位のシンプルなものがあってもいいのですが、ただ残念なことに、あちこちに似たような仕事がとても多く、観覧者からは大同小異と見えて、作品を眺めているだけでは区別が難しいほど。となれば、無個性な器を狙って作る意味は? という課題も出てきそうです。でも、もしそのことが作り手の生きる糧となっているのなら、作る意味はそこにあるはずです。
 経験や技術を積み上げ、作り手としての生きた痕跡をはっきりと残そうとするのか、それとも、厳しい世の中をとにかく生きながらえていく術とするか......。器作りは人生の選択そのものです。(も)2009/05/27


● 賑わい見せる全国各地の陶器市

 ゴールデン・ウィーク恒例の陶器市が、全国の各陶産地で開催されています。
 なかでも例年、最大級のイベントとなる「有田陶器市」(佐賀県西松浦郡 4月29日~5月5日)は、天候にも恵まれて、初日の29日は20万人を越える人出となり、好調な滑り出しだとか。一方、関東屈指の陶器市といわれる「春色益子陶器市」(栃木県芳賀郡 4月29日~5月6日)では、初日におよそ6万人の賑わい。販売店が50軒、地元の若手作家や窯元などは500張以上ものテントで出店、さらに各地から若手作家などもやってきて加わり、年々増加傾向にあるのだとか。そのお隣の笠間の「陶炎祭(ひまつり)」(茨城県笠間市 4月29日~5月5日)はといえば、会期中、20万人ほどの来客が見込まれています。
 各産地によって趣向は様々ですが、この時期に窯開けを合わせる産地や、作家作品を廉価で販売する店などもあって、見逃せません。しかしなんといっても、陶産地で良質のものを直接見て買える安心感や、おおよそ市価の2割から半額程度まで値引きされているのが、陶器市の魅力です。ことによると、値札からさらに値引き交渉できる店も割とあって、買い物の醍醐味が体験できます。
 その他、この春の連休中には「大堀相馬焼大せとまつり」(福島県双葉郡 5月1日~5月5日)、「春のしがらき駅前陶器市」(滋賀県甲賀市 4月29日~5月6日)、「新緑伊賀陶器市」(三重県伊賀市 5月2日~5月4日)、「九谷茶碗まつり」(石川県能美市 5月3日~5月5日)、「萩焼まつり」(山口県萩市 5月1日~5月5日)、「民陶むら祭(小石原)」(福岡県朝倉郡 5月3日~5月5日)、「波佐見陶器まつり」(長崎県東彼杵郡 4月29日~5月5日)などが予定されています。(三)2009/05/01


● 最近、読者の皆さんからよく聞かれます

rogo-green.jpg 日本の美を、そしてその向こう側に見える人々に興味を持って、日本という国を歩いてみよう、そう思っているのに......西洋の神話の話を一題します。
 ギリシャ神話の豊饒の女神は、デメテルです。デメテルが描かれている絵を見ると、その象徴としてかならず脇に描かれるのが「麦」。ローマ神話におけるケレスにもそのまま重なり、麦は収穫の、あるいは生命の象徴として扱われ、また運を招き、福を呼び寄せるものなのだそうです。
  実は、小誌「センテンモン」のロゴは、麦畑をデザイン化して作りました。もともとのアイデアは、日本の近代を拓いた偉大な作家が意匠として用いているのを知り、そのことに触発されたのがきっかけとなりました。将来に向かって、勢いよく伸びていくイメージや、可能性を持った若い作り手を応援したいという意味としても、ぴったりだと感じています。
 これからは小誌のロゴを、そんなふうな気持ちを込めたものとして眺めて下されば、と思います。(も)2009/04/15


● 九州の器と味の居酒屋

沖縄の若手作家・小泊良(KODOMARI Ryo)さんの個展を見ました。
その帰り、夕闇の銀座・新橋を通り過ぎ、先輩にちょっといい店に連れていってもらいました。ちょっといいとは、気取らず美味しいものをつまんで呑める店。港区赤坂の「有薫」です。
yuukun.jpg薩摩揚げ、きびなご・太刀魚・鯖の刺身、芥子蓮根、おきゅうと、紅芋の天ぷら......。博多出身の先輩によればまさに故郷の味とか。それに器は九州の各民窯もので、小石原、小鹿田、薩摩など素朴な手触りに和みました。芋焼酎のお湯割りが出てきたのは飛鉋(とびかんな)のカップです。ご店主が久留米出身とのことですが、お店の女性が着用のステキな着物は久留米絣ではなく大島紬......でした。檀一雄や筑紫哲也氏なども、この店の常連だったそうです。
冒頭の小泊さんは沖縄・今帰仁(なきじん)で制作されています。そのおかげで、あの風渡る今帰仁城(グスク)の話や、九州・沖縄の食べもの、自然、器など豊かさの話題ですっかり盛り上がった宵でした。(Na)2009/03/13


● マルコポーロとスプーン

 「プレヴュー&レヴュー」でもご紹介した秋谷カヲルさんの銀のさじ。どれもステキでしたが、個人的にピカッと光って見えたのは、四角いコーヒー用スプーンでした。一杯分の粉が量れるんです。コーヒー党の自分としては、あんな道具があったなら寝ぼけ姿のドリップも少しはサマになるかも......なぁんて思いました。
mariage-spoon.jpg 秋谷さんの個展会場には茶葉用のものが多かったので、ご本人に好きな紅茶の銘柄を聞いてみました。答えは、「最近はマルコポーロ」でした。そこで思い出したのですが、以前取材でお会いした陶芸家の井山三希子さんも、お気に入りの紅茶としてマルコポーロ(マリアージュ フレール)をあげられていました。茶器や道具作りのプロに支持されるのですから、さすが老舗のマリアージュ、ですね。(写真はマリアージュの紅茶セットの付属品と同種のもの)
 皆さんは紅茶党ですか。それともコーヒー党?  (T)2009/03/02


● 「近代工芸案内」を片手に「花」展を

 本誌の「トキメキ図書室」のなかのブックガイドに、「近代工芸案内」を紹介しました。東京国立近代美術館工芸館の学芸員の皆さんが中心になり、編集と執筆がされた本です。内容の詳細はここでは省きますが、とても分かりやすく、目線は高いけれど腰の低い、なかなか好感の持てる案内書です。
 現代の工芸、とくに最近増えている「器」に興味を持ちはじめた皆さんや、自らの感覚だけに頼って鑑賞し、善し悪しを判断する時など、この本をツアーリーダーにして、ほんの少しだけ歴史や、専門家の研究の成果を踏まえた見方をしてみたらどうでしょう。もちろん、最終的にはどう接したって構わないのですから、お仕着せなどでなく、「こういう見方もあるのだなぁ」という参考でいいのでは、と思います。するとますます、工芸品に興味が湧くのではないかと感じています。
 折しも、「プレヴュー&レヴュー」で取材しました、工芸館の所蔵作品展「近代工芸の名品-花」も間もなく開催(2009年3月7日~5月10日)されます。「近代工芸案内」に掲載されている作家たちによる作品も、もちろん展示される予定です。(も)2009/02/27


● 鈴木五郎展の帰りに見た「醤油入れ」

鈴木五郎氏の個展「四都物語」のひとつを見るために、高島屋の横浜店を訪れました。
こんな時代でも、会場には年輩の女性が作品を求めるなどしていて、それなりの熱気と緊張がありました。同展の横浜展のテーマは「呼継」です。いわば鑑賞者の、修復のための技を積極的に作品に取り込み、表現手法としている陶芸家は鈴木五郎氏以外に聞いたことがありません。風変わりでありながら、しかし興味深く作品を見ることができました。

kiyoken-shoyuire.jpg同展を見た後は、シウマイの老舗・崎陽軒の本店(横浜市西区高島2丁目)に立ち寄りました。「ひょうちゃん」(左の写真)と呼ばれている、シウマイを買うとついてくる醤油入れを見るためです。1928(昭和3)年、シウマイが発売された当時は、醤油はガラス瓶に入っており、戦後、今のような瓢箪型の磁器製になったのだとか。最初にこれに絵付をしたのは「フクちゃん」の作者、漫画家の横山隆一氏(1909-2001)といいます。ほかにクリスマス限定の絵付や、崎陽軒の100周年記念デザインなども含めて様々な種類があり、かなりの人気者だということがわかりました。もちろん、これを専門に集めている収集家もいます。
同店にはいろいろなタイプの「ひょうちゃん」が展示されており、こちらの方もじっくりと作品鑑賞してきました。(三)2009/02/20


● 美術展のインフォメーションが勢揃い

日頃から利用する機会の多い、交通の要衝・新宿駅の都営地下鉄線。
その改札口の真ん前に林立する柱には、いつも様々なインフォメーションが掲出されています。ふと気がつくと、そのすべてが美術展のものになっていてビックリ。こんな時代でも、世界中から日本に美術品が集まってきていることを実感するのと、同時に、世間の美術に対する関心の高さも相当なものなのだなぁ、と思います。ところで、そのなかで工芸関係のものはと探してみると、東京都美術館の「生活と芸術 アーツ&クラフツ展 ウィリアム・モリスから民芸まで」(~4月5日まで)、東京都江戸東京博物館「薩摩焼 パリと篤姫を魅了した伝統の美」(~3月22日まで)、サントリー美術館の「一瞬のきらめき まぼろしの薩摩切子」(3月28日~5月17日)などでした。都美館の「アーツ&クラフツ展」では柳宗悦らが建てた「三国荘」が復元され、室内には濱田庄司、河井寛次郎、黒田辰秋らの優品が展示されています。ファンの皆さんは、忙しくなりそうです。(M)2009/02/14

 

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● 春の展覧会シーズン

街を歩いていたら、ルーシー・リー(Lucie Rie 1902-95)の巨大な器が目に飛び込んできました。
それは、まもなく開催される「U-Tsu-Wa /うつわ」展のポスターでした。
そういえば、ここは六本木アート・トライアングルと呼ばれるところ。
国立新美術館、サントリー美術館、森美術館をはじめギャラリーも多く、日々魅力的な展覧会が開かれています。
ポスターを見たのも、竹内紘三展(桃居)から鈴木卓展(サボア・ヴィーブル)への道すがら。

お二人とも期待の若手陶芸家です。
今回竹内さんは白から一転、黒っぽい土で造形的花器を発表していました。
鈴木さんの会場には、昨年加守田章二賞(益子陶芸展)を受賞した黒錆の作品とは対照的な、バニラ色の器が並んでいました。
こんな新作展は、見ているだけで自分の脳だか心が喜んでるのがわかります。

立春も過ぎ、春の展覧会シーズンも幕開け。
編集部では随時、全国の「展覧会スケジュール」を更新しています。
お目当てはもちろん、周辺エリアの展示情報もチェックして下さいね。
センテンモンと一緒に日本の作り手たちを応援していきましょう。 2009/02/09(k)


● 若手作家を応援します

若手の陶芸家、といっても30歳代の半ば、坂戸市(埼玉県)に窯を持つ島田敦夫さんの新作展(銀座・松屋)に立ち寄りました。しばらく見ないうちに、焼締め、刷毛目、長石釉、灰釉、黄瀬戸、瑠璃釉......とグッと作域が広がりました。親しみの感じられる、土ものの実用的な器が中心です。
ふと気がつけば、陶芸家さえも淘汰されようという時代に差しかかっています。そんななかにあっても経験を重ねながら、作者としての目的や個性をどう伝えるか。ひとつの答えが展覧会だと思い、見て歩くようにしています。
「センテンモン」では才のある、技術ある、ガッツのある、一家言ある、可能性ある、......とにかく、なにかある若手作家を応援します。
なお島田さんは、近くグループ展が予定されています。  (も) 2009/01/30


● 工房の守護神

作家の方々の工房におじゃますると、しばしば愛犬・愛猫に出会います。
ある日のこと。
カメラマン氏と取材先へ到着すると、ウッ~ワワン――。さっそく警戒警報がなり響きました。よくあることなので気にせず、軽く犬に声をかけるとますます吠えつのります。どうやら休戦合意は無理とあきらめ、そのまま取材を進めました。幼少体験のせいで愛玩動物が苦手なこの人は、いつものことですが、こわいなんて様子はみじんも見せず、黒い犬の周囲だけはなんとなく遠巻きに行き来しながら無事、撮影終了。

ところが上がりの写真を見て驚いたのです。
作品や工房風景の間に、あの愛犬の姿が......。目を疑い、それから笑いがこぼれました。なぜって、写真のなかのまっ黒な瞳はけな気にこちらを見つめています。しかもアップ。
「大丈夫だったんですか? これっ?」
問いかける私の目をそらしながらカメラマン氏は「うん。大丈夫。あっちから寄ってきたから」ときっぱり。
よく聞いてみると最初はこわごわ撮っていたそうですが、そのうち犬の方からじりじりと歩み寄ってくれたとのこと。写真だけ見るとそこにはほんわり信頼感さえ芽生えてそうな気配です。

飼い主は、益子の陶芸家・小川博久氏。そういえば取材当日、吠え続ける愛犬に微笑みながら「大丈夫ですよ。あの子はちょっとこわがりなだけだから」と呟かれたのを思い出しました。
創作は時に孤独な作業です。作家のまわりに居るとはなしにひかえる動物たちは、その相棒あるいは守護神のようなものかもしれませんね。制作現場の様子を伝える愛らしいひとコマです。  (T)2009/01/29

 

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● 小学生によるやきものへのアプローチ

陶芸家の個展ではないのですが、「須崎市立横浪小学校6年生15人の縄文土器づくり展」という、長いタイトルの展覧会が開催中です。須崎市は高知県のほぼ中央部にある土佐湾に面した町。近年、同県の刈谷我野遺跡(香美市)から縄文時代の尖底土器が発掘され、それらを見本にして小学生たちが土器の復元を試み、完成作を発表するという催しです。胎土は他の遺跡周辺から採れた2種類の土を中心に、さらに川砂などをブレンドして使用したといいます。いやに本格的......だと思ったら、本展の企画・指導にあたったのは四万十町を拠点に活躍する地元の陶芸家・武吉廣和氏と分かって納得。
あちこちの美術館などでも子供を対象にした陶芸展が開かれる昨今、このような貴重な体験学習が、いずれは日本の現代のやきものに対する理解や普及にもつながるだろう......と思ったりして。この土器を使って、横浪小の子供達は鹿や猪の肉、どんぐりなどを食材に、およそ8,000年前の縄文当時の料理も真似て作り食べたのだそうです。ハンバーガーより美味しくなかったとしても、忘れられない味になったのでは。
会期=2009年1月2日~1月31日 会場=高知県立歴史民俗資料館(1階フリースペース) (Na) 2009/01/05


● 「のめり込んで」作ったコーヒー・カップに注目!

明年、年明け早々に興味深い展覧会が開かれます。栃木県・益子で仕事をする人気作家・高内秀剛氏の展覧会です。「秀剛デミカップ色々展」。うん? 酒器じゃなくってコーヒーカップ? と正直、最初はしっくりきませんでした。ところが見てビックリ。赤絵、柿釉、織部、志野など、やきものらしい素材感を実に巧く出しながら、口作りや把っ手、あるいはソーサーなどに細やかな配慮が施された、シャレた作です。作者ご自身にとっても面白い仕事だったそうです。のめり込んで作ったというだけあって、相当に楽しめそうなデミカップに仕上がっています。
1客25,000円ほどで、約100点の出品予定だそうですから、じきに完売すると直感的に思います。早い者勝ちになりそうですね。
会期=2009年1月6日~1月19日 会場=日本橋三越(本館6階美術工芸サロン)
(M)2008/12/30


● 「小津家の食卓」でお取り次ぎをはじめました

「小津家の食卓」では、記事として紹介した作品のなかから、これは読者のみなさんにもぜひ使って頂きたい、と思える作品を編集部がお取り次ぎしていきます。器として使い勝手に優れ美しいのはもちろんですが、現代の生活に馴染むと感じられたり、お買い得だったりするものを選んでお取り次ぎしたいと思っています。料理の器だけでなく、様々な実用的な作品を取り上げたいと思っているので、チェックしてみて下さいね。
ところでこの頃、「小津家」とは誰の家とか、どんな方という質問をあちこちで受けます。そのことは今度また、......ゆっくりとお話しすることにします。(T)2008/12/27


● 超感覚派・礒﨑真理子さんにインタヴュー

イタリアから帰国し、東京・渋谷で個展を開催中(ギャラリーTAO 2008年11月13日~11月26日)の礒﨑真理子さんにインタヴューしました。

以前取材したのは、確か12年ほど前のこと。説明のつかないぽわんとした不思議な造形は、ますます好調です。ミラノ・レッドとでも呼びたい今回の作品の赤色は、実はアクリル絵の具による着色を選択しています。そんなユニークで、超感覚的な礒﨑さんのインタヴューの詳細は、後日、掲載します。お楽しみに。(も)  2008/11/ 20


● アクセサリーは展覧会で

先日、ちょっとした発見をしました。
「金工 五人展」(桃林堂・東京)と題された展覧会でのこと。とてもステキな指輪に出会ったのです。見とれていたのも束の間、一足先に来ていた女性が買って行きました。園部雅歌さんという作家のものでした。
この時新鮮に思えたのは、意外に求めやすい価格だったことです。その指輪は確か1万円と少し。もちろん素材にもよるのでしょうが、これならジュエリーショップで買うのと変わりなく、むしろオリジナル性を考えたら、ずっと価値があるかもしれません。
「アクセサリは展覧会で」もアリなんだ......と改めて発見した一日でした。(N)


● 「会津本郷・宗像窯の器と新そば」の催し

会津の名門・宗像窯で「器と新そば」の催しがあると、連絡がありました。
こだわりの蕎麦打ち職人・岡島イチローさんによる"幻の寒ざらしそば"は、限定30食。(11/30 要予約 宗像窯 TEL.0242-56-2174)ライブもあるそうですよ。

そういえば取材ではじめて本郷を訪ねた時、清楚な白い花で埋め尽くされた蕎麦畑が連なる風景を見ました。ちょっと遠いけど、蕎麦を食べに会津にドライブなんて、なんかいいですね。それに、この機会に磐越西線に乗るというのもありかと......。この路線の車窓、ぜったいオススメです。
かの河井寛次郎が賞賛した会津本郷の器と、新そば。資料とストレスに埋もれた編集部に、いっとき、風が吹いたのでした。(K)


● 沖縄からDMが届きました

今日、沖縄からセンテンモン編集部に展覧会のDMが届きました。

若手の陶芸家・赤嶺学さんの新作展の案内でした。

会場は「ART・CRAFT よかりよ」さん。取材で沖縄にいったとき寄らせていただき、先日は東京での企画展の折にオーナーの八谷明彦さんと再会しました。那覇と東京を工芸でつなぐような仕事を目指していらっしゃいます。さっそく展覧会スケジュールに掲載します。

読者の皆さんも機会があれば、ぜひ会場に足を運んでみてください。(T)


● 空に浮かんだ新・陶芸誌、創刊です

「センテンモン」では、ジャンルに囚われない現代日本の陶芸を中心に、工芸全般を取材対象に定めています。

作者へのインタヴューや工房訪問、展覧会などの取材記事はもちろんですが、読者の皆さんが、現代の工芸に様々な切り口からアプローチできるよう計画しています。

優れたものと人との出会いに心を躍らせながら、「センテンモン」はこれから日本を探す旅に出たいと思います。

どうぞご期待下さい。(も)

 

編集長: 森下泰文 編集部: 坪井京子・三木 薫・長坂 甫・成田景子

アートディレクション: 熊澤正人  デザイン: 高原真吾

ウェヴ制作: 渡井俊輔・日隈知美・横田奈穂