感覚だけに流されない質実な器

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 今や、もの作りとしての独立の地の選び方は、その人の作家観や人生観といっていいほど、理由も考え方も個性的で様々です。
  2011-06-28henshubu-asanuma3.jpg 先日、2年ほど前から、群馬県北部の沼田市で仕事をはじめた浅沼美奈子さんの工房を訪ねました。東京に生まれ、  九谷の窯元でみっちりと修行し基本を身につけてから各地を見て廻り、この地に独立したといいます。もちろん周辺に陶産地はなく、消費地もすぐ近くにはありませんが、自然が豊に残り、制作するのによい環境が整い、また暮らしやすさなども考慮したといいます。
    素材は主に、石川県などで採れた磁器土を用いていますが、それだけでなく、自らアトリエ周辺で探して見つけた土や陶石を混ぜ、独特なテクスチャーを得ることに成功しています。
 普段の食卓で使うのにちょうどよい実用的な器や、雰囲気たっぷりな照明にもなる茶香炉などを制作しています。装飾は染付を中心にし、伝統的な模様をアレンジしたもの、また、女性らしい柔らかさの出た装飾など、それぞれの器の形に合わせ、物足りなさもなく、また、うるさくもない程度に描かれています。
 飯碗をひとつ、ふたつと手に持ってみると、素地はちょうどいいくらいの厚みで、口造りや高台など、ピリリとしていてなかなか爽快な作域です(写真右) asannuma mesiwan _0099.jpg。意外だったのは、見た目よりもずっと高台 asanuma koudai _0218.jpg(写真左)への手がかりがよく、しっかりと作られていて好感が持てました。とはいっても、器全体の手取りは重くも軽くもないご飯を盛ってちょうどいいような現実的な実用性もあるのです。カップや蓋ものなど、なかには同世代の若い女性たちに共感を得られそうな作もあり、仕事の範囲はかなり幅広いように感じられます(写真下)。それに特筆すべきは、まだ発表価格が良心的で、とても廉価であることです。
 工房に置かれた棚には試薬瓶が並び、なかには近くで採取したという陶石などが入れられていて、素材作りから手掛けて、ここで作る証としての固有のものを作ろうとする浅沼さんの姿勢が見えるようでした。(M)2011/07/08
◎浅沼美奈子さんのHP(工房 吾も紅 http://waremokou375.web.fc2.com/asanuma cups _0101.jpg

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