濱田庄司の側に近づけたような午後

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 神奈川県川崎市高津区は、陶芸家・濱田庄司(1894-1978)が生まれ、眠る町として知られています。作家としての活動をはじめてからもイギリス、沖縄、そして栃木県・益子などに制作の拠点や窯を持ちましたが、本籍地は終生、高津区溝口に置かれたままだったといいます。なにか、考えがあったのでしょうか?
11-02-20henshubu-hamada3.jpg 人間国宝に認定され、文化勲章を受章した郷土の偉大な作家ですから、没後30年の折には川崎市民ミュージアムで大規模な展覧会(2008年)が開かれ、また現在でも溝口駅の周辺を歩けば菩提寺や記念碑など、あちこちに面影をたどることができます。
  そのひとつに濱田庄司の父の実家があり、江戸時代に創業された大和屋という老舗の菓子舗でした。5~10歳の頃、濱田は実際にここで暮らしており、幸いにも今は創業当時のまま同じ場所で、店は装いを転じて「ケーキ大和」として営業を続けており、馴染みの地元客らが間断なく訪れていました。
11-02-20henshubu-hamada2.jpg     たっぷりと外光が入り込む広々した店内は落ち着いていて、コーヒーなどを愉しむこともできます。ケーキを選んで注文するとすぐ、かなり長く使い込まれたであろう縁に柿釉が掛けられた皿(写真上)で振る舞われ、なんとなく得した気分。とてもいい感じのケーキ皿です。  また店内の一角には展示ケースが設えられていて、濱田の赤  絵作品や四男の濱田能生氏のガラス作品などとともに陳列されていました(写真左)。
    11-02-20henshubu-hamada1.jpg そんな独創的な作を見ながら思うのは、柳宗悦らとともに民芸運動に傾倒して民芸品を蒐集し、また、他方では人間国宝の認定の技術が「民芸陶器」とされたことも重なって、以降、濱田作品は民芸であるかのような誤りが、一部で生まれてしまったことです。
 ともあれ、巨匠の実家でお茶を飲みつつ、センチメンタルになるのも、あるいはノスタルジーに浸るのもよし。それが錯覚だとしても、歴史的陶芸家の側に、ほんの少し近づけたように思えた午後のひと時でした。(三)2011/02/19

◎ケーキ大和 川崎市高津区溝口3-13-5 TEL.044-822-4526

 

 

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